2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2009年2月20日

 科学研究の分野での「グローバルCOEプログラム」(事業費340億円)は、世界最高水準の研究拠点作りをするという目的が掲げられているが、実際には150もの研究拠点を対象とする方針で、バラマキになっており、しかも実質的には就職先のないポストドクターに対する手当てになっている実態が指摘され、これも「今のままなら不要」とされた。

あなたの町の無駄も炙り出せる

 以上のすべてに共通して言える重要なことは、仕分け人は事業の趣旨を否定しているのではないということだ。「体験学習」や「道徳教育」、「一流の科学研究」など事業名や趣旨はすべて立派だし必要なものと思われる。しかし問題は、実際に行われていることがその趣旨から大きくかけ離れ、膨大な無駄遣いが行われているということ、そして、文科省はその実情を把握していなかったり、把握していても放置しているということだ。

 これらの結果に対し、文科省は昨年9月の予算要求でほぼすべての項目で増額要求をしていたが、最終的にはモデル事業が08年度予算189億円から3割以上削減されるなど、来年度の予算にも反映されたと考えられる。

 ただし、事業仕分けの結果がすんなり反映されたわけではない。

 仕分けを行うこと自体について文科省、文教族議員から事前に強い反対圧力があったし、とりわけ公開で行うことや、構想日本で用意した「事業シート」に統一された形式で記載することに激しい抵抗があった。事業仕分けの結果についても、自民党内で河野チームは猛烈な反発を受け、最終的に河野チームと文教部会が合同会議を開いて決着をつけることになった。

 ところが、文教族からの反発に対して河野チームが現場の状況を踏まえて具体的な説明をしたところ、最終的に納得する議員が多かったと聞く。これこそが「議論」を大事にする事業仕分けの醍醐味であり民主主義の基本だと言えよう。マスメディアをはじめ私たちも政治家を揶揄することが多いが、真剣な議論をすれば理解ある議員も多いのである。なお、その際文科省が提出した資料は、事業仕分け当日の資料から事業の趣旨や目的が書き換えられており、文教族からも批判の声があったという。国会議員、ひいては国民を愚弄した行為と言わざるを得ない。だからこそ「公開」が重要なのだ。

 昨年は、12自治体(14回)、4省で事業仕分けを行い、実施数は飛躍的に増えた。当初は強い反発のあった自治体からも今では依頼がたくさんあるし、何よりも自民党の中から仕分けを行うグループが出てきたことの意義は大きい。しかし、国交、農水、厚労省といった大事業官庁は手付かずだ。これらの官庁での実施の先にこそ本当の意味の行財政改革がある。私たちは歳出削減を目的としているわけではない。無駄を少しでも減らして、国民にとって必要な事業に回し、効率の良い行政になって欲しいだけなのだ。未曾有の危機にあって、是非これらの官庁も省益にとらわれず国益のために事業仕分け、すなわち現場の声や国民の声を聞くことを実行して欲しい。

 戦後60年間手が入らなかった領域(不必要な行政事業や権限)に切り込むには、国民一人ひとりの力が必要となる。「自分の住む町でやってみる」「各政党に実施するよう働きかける」などの積み重ねが大改革に繋がる。今年は事業仕分けを国民運動にして、「戦後60年目の大掃除」実現の年にしたい。

◆「WEDGE」2009年3月号

 

 
 

 

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