【特別対談】日本のソフトパワーを考える(全4回)

2009年10月9日

  いま、さまざまな伝統工芸の継承者が途絶えつつあります。たとえば着物職人。国宝級の技術をもった職人であっても、その賃金は時給に換算するとファーストフードよりも安いと言います。このままでは、日本の伝統文化は衰退の一途をたどることでしょう。
このような状況を引き起こした要因は何か、今後日本の文化教育はどのような方向性を保てばよいのかについて、議論いただきました。

青木 一番いけないと思うのは、小学校や中学校、高校の公教育のなかで、日本の文化についてほとんど教えないことですね。大学では専門研究はありますけど、一般の学生はほとんど何も知らないと言っていい。日本の文化だけではなく、他国の文化でもきちんと教わっていない学生が政治家になったりして日本を動かしていくわけですから。文化教育が欠けていることは、本当に残念なことです。だからバラカンさんの番組のように、日本文化をきちんと発見していただくのは本当に大切なことです。中にいると分からないことが、他者の目であればき ちんと分かる面がありますから。バラカンさんのおやりになっていることは非常に貴重な観察であり、記録であり、啓蒙なんです。

 大体文化というものは、その中に育った者にとっては言葉と同じように、無意識に当たり前のものとして接しているものですからね。だから、バラカンさんが見ると、これは重要だとか、これは当たり 前じゃないとか、見えてくるわけで、これがやはり文化をさらに鍛える材料になると思う。だから、他者の目というのが必要で、われわれも例えばパリに行って「これは面白い」なんて言うと、それは実はパリの人たちが気が付いていないところだったということもあるわけです。だから、お互いに観察しあうことが文化の保存にも維持にも発展にもなる。

バラカン 極端に言えば、伝統工芸の後継者がどんどん いなくなっているでしょう。よくそういう人たちと話していると、「いや、もうこの代で終わりですよ」と、もうあきらめのような感じで言われることが多くて、僕なんか自分でやっているわけではないけれど、危機意識を持ってしまいます。

 以前知り合いの着物商人の方と話していたら、今京都には、国宝級の職人が、もうほとんどいなくなっているんだそうです。聞くところによると、国宝 級の職人でも仕事を時間給に換算すると、ファーストフード店で働いたほうがましだと言うんですよ。着物というのは目の玉が飛び出るような高価なものもあり ますが、職人に入るお金は少ないそうです。要するに、生計が立たないから後継者がいなくなるわけですよね。

日本の文化教育に足りないこと

青木 確かに人材育成が一番大切なんですよ。今はスピードの時代だから、職人世界のような、研修の時期、言うならば下積みの生活がものすごく長いものは敬遠されるでしょう。徒弟的な仕事を何年もして技術を得、一人前になっていくのに、その過程で挫折しちゃう。もっと違うところに行ったほうが楽ですから。それに、社会が伝統的な文化を維持する技術者やアーティストに対してあまり敬意を払っていないように思います。これは恥ずかしい。

バラカン うんうん、そうですね。

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