米国の大統領候補指名が近づくにつれ、多くの候補者がひしめく共和党候補選びはますます混迷の度を深めている。
一時は圧倒的な人気を誇っていたドナルド・トランプ氏だが、「ただの人気投票からシリアスな候補選び」となり、やや支持率を下げている。10月15-19日のNBCテレビ、ウォールストリートジャーナルによる世論調査によると、トップは相変わらずのトランプ氏だが支持率は25%まで下がった。2位に浮上しているのはベン・カーソン氏で22%、以下マルコ・ルビオ氏13%、テッド・クルーズ氏9%、ジェブ・ブッシュ氏8%、カーリー・フィオリーナ氏7%となっている。
唐突な「ブッシュ攻撃」
このタイミングで、トランプ氏が突然の「ブッシュ攻撃」を始めた。きっかけは10月16日「自分が大統領だったら2001年9月11日の悲劇は起こらなかっただろう」とトランプ氏が発言したこと。続けて「ジョージ・W・ブッシュ氏は我が国は安全だ、と主張していたが9・11はそれが嘘だと証明した」とジェブ・ブッシュ氏の兄であるブッシュ元大統領を批判したのだ。
トランプ節はまだまだ続く。「当時のテネットCIA長官はテロ攻撃があることを知っていた。長官はそれを大統領に警告したし、耳を傾ける人には誰にでも危険性を語っていた」しかしブッシュ政権下のFBI、CIA、NSAの相互コミュニケーションの不足、ホワイトハウスの指導力不足により、テロへの対策が遅れ、9・11の悲劇が起こった、という。
自分が大統領だったら悲劇は防げた、という理由は「自分は移民政策に厳しい姿勢を取っただろう。その結果、テロの実行犯が我が国に侵入することを防げたはずだ」というもの。そして「自分はジョージ・ブッシュを非難しているのではない。しかし彼の政権下で事件が起こったのは事実。そしてジェブ・ブッシュが『私の兄は国の安全を守った』などと選挙キャンペーンで主張するのを聞きたくない」と付け加えたのだ。
これにジェブ・ブッシュ氏が反応。「兄は大統領としてやるべき当然のことを行った。多くの米国人もこれを認めているはずだ」とやり返し、「トランプ氏は兄を非難していない、と言ったが実際は非難しているではないか」と珍しく感情的になった。