WEDGE REPORT

2015年11月12日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 テスラ・モーターズがSUVモデルとなるモデルXのコンセプトを発表したのは2012年。今年9月30日、ようやく製品としてのモデルXがデビューした。7人乗りだが、テスラが「ファルコン・ウィング」と呼ぶガルウィング式ドアなどの斬新なスタイル、スタートから時速60マイル(約100キロ)到達までわずか4.8秒(ポルシェのSUVモデル「カイエン」ですら5.4秒かかる)、といったスポーツカー要素もたっぷり。

10月23日、自動運転技術についての記者会見を北京で行ったイーロン・マスク氏。背後にあるのは、同社のモデルS(Getty Images)

 しかしこのモデルX、発売とともにある批判にさらされている。「イーロン・マスクは税法の抜け穴をうまく利用している」というのがその内容だ。

テスラが得る数々の優遇税制

 理由は、モデルXの重量にある。基本重量は5441ポンドで、オプションなどを加えると6000ポンドを超えるのだが、ここには大きな意味がある。米国では重量6000ポンド以上の車だけに与えられる優遇税制があるのだ。

 連邦税法が定めるセクション179という項目で知られるもので、本来は「トラクターを買いたい農家」「大型トラックを買いたい運送業者、建設業者」などを想定して設定された。内容は重量6000ポンド以上の車の購入に対し、最大で2万5000ドルの税金控除が受けられる、というもの。米国で販売されるほとんどの乗用車、ライトトラックはこのカテゴリーに入らないが、大型ピックアップトラック、ハマーシリーズなど、ごく少数の車が合致する。

 セクション179のルールは曖昧で、個人事業主であり対象の車が「なんらかの形でビジネス目的に使用される」と申告すればほぼ認められる。テスラの広報もこの事実を認め「モデルXはセクション179に該当するが、税金申告の際専門家に相談することを勧める」などとコメントした。

 テスラが販売する車はEVゆえにゼロ・エミッション(無公害)、そのため連邦政府によるグリーンカークレジットとして7500ドルの税控除が受けられる。またテスラが本社を置くカリフォルニア州では、さらに25000ドルの州税控除も受けられる。つまり販売価格13万ドル前後と言われるモデルXは、合計で3万5000ドルもの税制優遇が受けられるということになる。

 ここまでは消費者側のメリットだ。テスラの車は10万ドル以上で、そのような車を買う層(購入者の平均年収は30万ドル以上とされる)、というのは本来こうした税控除を必要としない人々なわけで、批判が少なくない。

 しかも、テスラが販売する車は、テスラ本体にも税制優遇をもたらす。テスラは車を1台売るごとにおよそ4000ドルを受け取っている、という。

 これは「グリーン・エミッション・サブシディ・クレジット」と呼ばれるもので、元々カリフォルニア州が定めたものだ。州政府は各自動車メーカー、州内に工場を持つ製造業などに対し、地球温暖化効果ガスの総量規制を行っている。車であればひとつのメーカーが販売する車が排出するガスの総量、工場からも排気として大気に排出されるガスの総量に規制が設けられ、これを超えた場合は州政府に罰金を支払う。

 テスラの場合製造する車はすべてがゼロ・エミッションであるため、排気ガスは規制数値に収まる。この余った「排気ガス認可量」を他のメーカーに販売する形で収入を得ている。

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