世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月18日

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 英フィナンシャルタイムズ紙は10月13日付で、中国の西進政策に関して、北京駐在のトム・ミッチェル記者による、新疆ウイグル自治区の現状についての分析を掲載しています。

Getty Imagesより

自治と寛容の統治から強硬路線への転換

 すなわち、新疆は習近平政権の「新シルクロード」プロジェクトの要である。しかし、新疆は現在、暴動の温床となっており、中国政府のフラストレーションと悩みの種である。それは中国政府の政策がもたらした結果でもある。中国がインフラ整備を通してユーラシア大陸の通商と繁栄の再興を夢見るのであれば、まず新疆を安定させなければならない。しかし今の所、政府は民族の不満を助長しているだけの現行政策を変えるつもりはないようだ。

 新疆は中国にとって極めて重要な資源産出地域である。その上、資源が豊かな中央アジアへの玄関口でもある。そのこともあって、中国政府は新疆に多大な投資を行ってきた。しかし、それは新疆の不満を沈静化することにはならなかった。中央政府は、「民族分裂主義」、「宗教過激派」、「テロリズム」と戦っているというが、これらの暴力行為は政府の戦略に由来すると言う者もいる。1990年代中葉に策定された「七号文件」は、公安主導による宗教統制を強化し、1980年代の自治と寛容を強調する政策から強硬路線の民族政策へと回帰した。政治的弾圧と経済的支援という、硬軟混じりの新しい政策が画定され、今日に至るまで強化されている。

 今日の新疆において、警察と軍の存在感が際立っており、至る所で厳重な警備が敷かれている。2009年7月5日の暴動ですべてが変わり、この地域は暴力の発生と軍事化を繰り返す負のスパイラルに陥ってしまった。ウイグル族の多くの者は標準語である中国語を話せないために、良い仕事を漢族に奪われている。新疆における漢族の割合は、この60年で6パーセントから40パーセントを超えるまでになっている(それでもウイグル族は43パーセントを占めている)。オックスフォード大学のレザ・ハズマスは「硬軟混じりの政策は、教育水準の割に就業機会が少ないことと政治的な代表の欠如というウイグル族社会の二つの主要な不満を解消することに失敗した」と話す。

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