『鉄腕アトム』がアメリカで売れたことがわかると、『鉄人28号』があとに続いた。以降、続々と日本のアニメーションは海外進出を果たし、今の「クールジャパン」の礎を築いていった。藤田氏自身も、『鉄腕アトム』の2年後に、再びアメリカで『ジャングル大帝』を売ることに成功している。
どうして、藤田氏はこれほど次々と先駆的なことをやってこれたのか?
「大事なのは、閃くこと。そして閃きを感動に変えること。その感動を人に与えること──」
おそらく閃きを感動に変えるとは、思いついたことを実行に移し、その成果を手に入れることによって、まず自分自身が感動を味わうことだろう。自分が感動できないことで、誰かを感動させることなどできない。そして、そのための苦労を厭わないことが大事だと言う。「誰もやっていないことを始める時は、何より手間がかかる。その手間を惜しんだりすれば、絶対にうまくいかない」
「出会い」と「素直」
本日、藤田氏ご自身が執筆された本が刊行された。これを読めば、日本のテレビ史に名を残す錚々たる人々と、骨身を惜しまず生身で交流してきた藤田氏の人生を窺い知ることができる。
その本の一節に、次のような言葉がある。
「僕が好きな言葉は、出会いと素直。すべては出会いから始まり、素直な人間が最後には勝利する」
感動という言葉が素直に受け止められにくい時代になった。だが、自分の胸に手を当てたとき、そこに鬱屈としたものを感じ取れるようであれば、藤田氏の言葉を胸に刻むことをお勧めしたい。人との出会いを大切にして、感動を素直に求める心を磨くことでしか、たった一度の人生を輝かせることはできないはずだから。
■藤田 潔(ふじた・きよし)氏 プロフィール
1929年愛媛県新居浜市生まれ。1953年、早稲田大学商学部卒業後、ラジオテレビセンター入社。1960年、総合広告会社株式会社ビデオプロモーション設立、社長に就任。2000年、会長に就任、2009年、取締役名誉会長に就任、現在に至る。アニメ「鉄腕アトム」のアメリカ輸出、深夜番組の先駈けとなる「11PM」、スポーツ番組で初の衛星生中継となる「マスターズ」、筑紫哲也の「こちらデスク」、バチカンの「システィーナ礼拝堂修復特別番組」、ザルツブルクの「モーツァルト住家復元特別番組」、「世界遺産」、「100人の20世紀」、「美の巨人たち」、「食彩の王国」、「写真家たちの日本紀行」など、数多くの名番組に携わる。
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