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2015年12月2日

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永田安彦 (ながた・やすひこ)

日本エネルギー経済研究所 中東研究センター副センター長

1988年ニューヨーク大学経営大学院修士課程終了。石油会社勤務等を経て現職。著書に『米国投資銀行の事業概要と石油先物市場での戦略』(共著、日本エネルギー経済研究所)等。

米国シェール革命に端を発する原油安により、産油国の苦しみが続いている。生産量維持によってシェアは確保しているものの、財政は悪化の一途を辿る。減産をして価格を上げれば、シェールの火が再び灯る。産油国は出口の見えないジレンマに陥っている─。

 10月上旬、OPEC(石油輸出国機構)の盟主・サウジアラビアで政府部局に対して、倹約令が出された。自動車や家具の購入を止め、新たな不動産の賃貸に合意することを差し止め、当局者に売上金の集金を加速させる通達である。サウジの倹約令は異例中の異例である。

 非OPECではあるが、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金も資産の切り売りを計画する。ノルウェーの資産の元手はオイルマネーであり、原油安が富裕国の財政にも影響し始めた。こうしたなかでOPEC総会が12月4日に迫っている。

6月に行われたOPEC総会で減産しないことを発表し、記者に囲まれるサウジアラビアのヌアイミ石油相 (画像:REUTERS / AFLO)

 OPECは市場シェア重視の立場を崩さず、生産枠を大きく上回る水準で生産を続けているが、この生産方針に関して、明らかにOPEC内で分裂がある。サウジを中心とする市場シェア重視の立場のグループは、UAE、クウェート、カタールなど豊富な対外資産を保有する国々である。

 一方、減産により価格を引き上げたいグループは、ベネズエラ、イラン、アルジェリア、アンゴラ、リビアなど財政に余裕がない諸国からなる。

 財政均衡油価が160ドル/バレルといわれるベネズエラはデフォルト(債務不履行)の危機に直面する。国内での深刻な不況や60%を超えるインフレを背景に、今年8月には国民の暴動も起きている。

 財政に余裕のない政府は打つ手がない状況だ。IMF(国際通貨基金)は、アルジェリア、リビアが現在の歳出を続ければ、5年以内に政府準備金が底をつく可能性があるとした。これらの国々の間で「論争が始まれば、OPECは終わってしまう可能性がある」と警告するウォッチャーがいるほどOPECは困難な状況に陥っている。

 OPECでは豊かな国、特にサウジの発言権が強いため、この12月の総会でサウジの主導するシェア重視・過剰生産戦略が覆ることはないだろうが、長期的にこの戦略を維持できる蓋然性は低いと筆者は見ている。

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