2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年12月1日

日本経済は、いつから他力本願
いや中国力本願になったのか?

 1993年に当時の三菱銀行の上海支店開設のために上海に派遣され、その後の独立を経てかれこれもうすぐ23年、上海から日本を観察してきた。最近感じるのは、日本経済は、いつから他力本願、いや中国力本願になったのか? とうこと。中国株価が暴落すれば、中国人の爆買いがなくなるのではないかと心配し、7%を下回るGDPの統計が発表されれば、これでアベノミクスの先行きにマイナスの影響があるかもしれないと政府が発表する。

Shanghai modern urban architecture(iStock)

 そもそも、外国からの株式投資が完全に自由化されていない中国で、また、中国経済の実態がまともには反映されない中国の株価指数に世界の株価が連動すること自体も私にはよく理解できないが、市場のセンチメントとはそういうものだと金融の専門家に言われればそうなのかもしれない。

 先日中国の株価が暴落してまもなく、あるインバウンドビジネスと関係のある社長さんに質問された。これだけの時価総額が一気に失われたのだから、中国の経済に対する影響は計り知れないものがあるはずで、日本への観光客も減るのではないかと。中国からの旅行客の先行きは社長さんの業績と直接関連するので、真剣にこの問題を心配しているわけである。

 私の口から即時にでた回答は、おそらく、この社長さんの質問を全く満足させることのできるものではなかったと思うが、概ね以下の通り、株価の暴落で日本への旅行が減るとは思えないというものであった。

 ⒈ 上海の町の様子を見ている限り、景気が悪い感じは全くしない。近所のレストラン、ゴルフ練習場はいつも一杯だし、自家用車の登録台数も引き続き減る様子はなく、道路の渋滞はますます激しくなっている。町ゆく人の表情もこれまで通り前向きな雰囲気で暗い感じはしない。

 ⒉ 少なくとも私の周辺に多い、私から見て健全で中産階級とみられる中国人の様子を見ている限り、そもそも今回の相場で株式投資にのめり込んでいる人は見たことないし、株式投資を昔からやっている友人は高値で売り抜けて、家族で1カ月の欧州旅行に行っている。どうしても、今回の暴落が海外旅行にも影響をするという切迫感は全く感じられない。

 ⒊ それまで株を敬遠していた、庶民が株価の高騰におびき出されて、なけなしの預金を叩いてしまったという話は、メディアでは聞いたことがあるのでそういう人もいるのかもしれないが、もともと、市場経済が進展してきた中国では、不動産をやる人と株をやる人は明確に分かれている。これまで長期低迷していた株よりも、多くの人は不動産で資産形成をしてきたイメージが強い。私の周辺の中国のお金持ちの友人たちを見ていても、不動産は少なくとも3戸、多い人で10戸、20戸持っている人も少なくないが(100戸以上持っている強者もいる)、意外と金融資産は持っていない。

 そういう人がもともと比率の少ない金融資産の一部を今回の相場に投入し、すったとしてもどれだけの影響があるのか。これは以下に述べるブロガーから聞いた話だが、今回の株式相場で儲かったらもう一戸不動産を買おうと思っていたけど相場で損をしたので、手仕舞いして、不動産を買うのをやめた。そのお金で不動産は買えないけど、海外旅行するには十分なので、日本に旅行に行ったという人もいるくらい。

 ということで私が思い浮かぶのは極めて感覚的なものであったが、実際10月の国慶節の連休のフィーバーはみなさんご存知の通りで、私の感覚は間違っていなかったことが証明された。


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