世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月11日

 フィナンシャルタイムズ紙のマーティン・ウォルフ副編集長が、12月1日付同紙にて、「石油は有限の資源で価格は長期的に上昇する」などの従来の考えはもはや当てはまらず、石油をめぐる世界経済は新しい時代を迎えた、と論じています。

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シェール革命により変わる石油取引

 すなわち、BPの主任エコノミスト(元イングランド銀行の主任エコノミスト)のSpencer Daleは、油価がいかに形成されるかにつき、石油は有限の資源で価格は長期的に上昇する、石油の需要、供給は急速に変わる、石油は主として西側諸国に流れる、OPECは市場を安定させようとする、といった従来の考えの多くは間違っている、と言っている。

 これらの考えを揺るがせている一つの理由は米国のシェール革命である。米国のシェールオイルの生産量は、2010年にはほぼゼロであったのが、1日あたり450万バレルに増加した。Dale氏によれば、ほとんどのシェールオイルはバレルあたり50ドルと60ドルの間で採算が合う。

 そのうえシェールオイルの生産性は2007年と2014年の間に30%以上上がった。昨年油価が暴落した決定的な要因はシェールオイルの急速な増加であった。

 その意味するところは何であろうか。一つには短期的な石油の供給の価格弾力性が以前より高くなる。シェールオイル生産の投資も収益も短期であるので、生産のコストは比較的高い変動コストである。その結果、通常の石油の固定コストが高く、変動コストが比較的低いのに対し、供給は価格により敏感である。供給の価格弾力性が高ければ、これまでより市場が価格を安定させるはずである。しかし、シェールオイルの生産は融資の利用可能性により多く依存しており、融資が行われれば供給は増える。

 さらに石油の取引の方向が大きく変わる。米国の純輸入が減る一方で、中国とインドが決定的に重要な輸入国になるであろう。2035年までに中国は必要な石油の4分の3を輸入し、インドは90%を輸入することが予想される。そうなれば、中東の安定に対する米国の関心は減り、中国とインドの関心は高まるだろう。地政学的影響は少なからざるものがある。

 もう一つは油価の安定に果たすOPECの役割である。2020年に油価がバレルあたり80ドルという見通しと、50ドルという見通しがある。後者は米国の供給が続き、OPEC加盟国、特にサウジが生産のシェアを維持し続けるという2つの前提に立っている。ただ、低価格戦略は、長期にわたり公共支出が石油収入を上回るという苦痛を、長期にわたり産油国に与えることになり、いつまで持ちこたえられるであろうか、と論じています。

出典:Martin Wolf,‘Understanding the new global oil economy’(Financial Times, December 1, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/368e73a6-9775-11e5-95c7-d47aa298f769.html#axzz3thOfbqUo

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