2024年12月22日(日)

World Energy Watch

2016年1月3日

 気候変動問題に率先して取り組み、化石燃料離れに挑戦してきた主要先進国のエネルギー政策は、この1、2年パラダイムシフトと呼べる転換期に直面している。それは、米国のシェール革命に後押しされたオバマ大統領の脱石炭政策に代表される急激な石炭離れの動きに例示されている。さらに米国のシェール革命は米国を世界最大の産油国に押し上げ、結果として原油価格の下落を招き、自動車用燃料の代替として登場した生物由来のバイオ燃料の競争力にダメージを与えることにもなった。シェール革命が自動車産業の将来図も変えることになるかもしれない。

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 経済成長のためエネルギー消費が急増している新興国もパラダイムシフトから無縁ではない。大気汚染に悩まされる中国は、PM2.5の原因の一つである石炭の消費を削減せざるを得ない。中国は2030年までに二酸化炭素(CO2)の排出量をピークアウトさせるとし、削減の道筋を描いているが、その背景には大気汚染対策がある。電力不足に悩むインドは、あらゆる発電設備を導入せざるを得ない。石炭火力も増えるが、太陽光発電設備などの再エネも増やさざるを得ない。再エネの導入は気候変動対策にもなる。その資金援助を、気候変動対策として行うように先進国に求めている。

 シェール革命、原油価格下落、気候変動、大気汚染問題にみられるように、各国はエネルギー、環境問題で新たな局面と課題に直面しているが、新局面は、主要国の石炭離れ、再エネ、原子力発電増強の形に現われ、さらに新たなビジネスチャンスも作り出すことになる。

 日本企業もこの流れを受け止め失われた20年間で弱まった競争力を強化し、米中独韓との競争を勝ち抜き、輸出市場でのシェア拡大を狙うべき時だ。

石炭の黄金時代の終焉は長い日没

 国際エネルギー機関(IEA)は、最近発行されたレポートで「石炭の黄金時代の終焉」といい、1973年の第一次オイルショック以降続いて来た石炭消費拡大が遂に頭打ちになったとしている。オイルショックを契機に、主要先進国は一斉に石油から価格競争力のある石炭に燃料転換を図った。日本でも輸入炭を利用した石炭火力発電所が1981年に初めて運転を開始した。発電用、セメント焼成用燃料として先進国の需要が急増したが、やがて一段落すると代わって中国の需要が爆発的に増加することになる。

 1990年代から急速な経済成長期に入った中国では、電力需要も急増した。いま、中国の電力供給量は世界最大であり、日本の5倍になるが、その電力供給増強の大半を担ったのは国内に豊富にある石炭だった。1973年に4億トン強だった生産量は、90に10億トン、2000年には13億トンになり、2014年には38億トンになる。世界の石炭生産量は73年の30 億7000万トンが2013年に79億700万トンになったが、2014年には78億6000万トンと、オイルショック以降初めて世界の生産量が前年から減少し頭打ちになった。IEAは黄金時代の終焉と呼び、長期に亘り減少が続く、長い日没の始まりとしている。


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