WEDGE REPORT

2015年12月1日

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 10月下旬の習近平主席の訪英時、英国政府は原子力発電所の新設に中国資本の受け入れを決め、さらに中国製の原発設備を将来採用する計画を明らかにした。翌日の「ガーディアン紙」は、基幹技術である原子力分野に中国を受け入れたことを、「中国との原子力取引は、今まででもっとも馬鹿げた合意の一つ」との記事を掲げ強く非難した。

 一方、中国が参加するヒンクリーポイントC原発において2万5000人の雇用が創出されるとの英国政府発表を歓迎するビジネス界の声もある。また、中国の参加により、「原子力技術が流出する」、あるいは「いざという時に発電所が停止する恐れがある」との指摘に対しては、「巨額の投資を行った中国が、投資額を捨てる行動を取ることはない」との反論がある。

 習近平主席と英キャメロン首相との会談で中国との原発取引が発表されたため注目されているが、英国原発への中国の参加は既定路線であり、何も目新しい話ではない。ヒンクリーポイントに中国企業が参加することは、2013年10月に英国政府により発表されている。正式発表前には、英国地元紙が、「ヒンクリーポイントの設備は中国製になる」と報道し、地元で「原発は歓迎だが中国製は困る」と反対運動が起こった。

 その時期に、たまたま英国政府関係者と面談する機会があり、「中国製設備を英国政府は受け入れるのか」と尋ねたことがある。数秒間沈黙があった後、中国製設備が導入されるかどうかの是非を明らかにせず、「資金を提供してくれるのであれば、中国でも、どの国の設備でもいい」と答えてくれた。首脳会談では、中国製原子炉華龍1号機がブラッドウエルに建設される予定と発表されたが、今年になり、中国広核集団は、「ブラッドウエルでの建設を前提に115万kWの華龍1号の包括設計審査(型式認定)を16年に英国政府に申請する」と発表している。既定路線に沿い英中両国政府は粛々と協力関係を具体化しているだけだが、英国政府が原発建設の資金と技術を中国に依存するには当然理由がある。

英国南西部に位置するヒンクリーポイントCの建設予定地。中国が建設を支援することになった (画像:REUTERS / AFLO)

世界を牽引した英国原発
消えたのは何故か

 福島第一原発1号機の事故の後、英国政府関係者から「福島事故の際に日本から退避する必要があるか、ロンドンの施設で解析した。仮に1号機から4号機まで炉心が全て溶融しても日本から退避する必要はないとの結果だった」と聞いた。話は、「遠く離れたロンドンですら解析ができるのに、日本はドタバタしていた。危機管理能力がない内閣だったのが、日本の不幸だった」と続き、「世界で最初に商業原子炉を完成させた英国は、この程度の解析はできる」と自慢で終わった。しかし、英国の原子力業界の実態は、自国の原発建設さえも自力でできないほどに衰退している。

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