デンバー市と提携
街ごと請け負うパナソニック

市全体のエコシステムを担う


土方細秩子 (ひじかた・さちこ)  ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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「サステイナブル」は今やどの業界でも「今後の開発」を語るのに必須の用語となっている。しかし個々の電子デバイス、家電などを節電機能を持つものにし、エネルギーを再生利用可能なものとし、低燃費あるいは無公害車を作り、電球をLEDに変え、と様々なアプローチはあってもそれをひとつにまとめる大きな動きはなかなか見られない。

「シティ・ナウ」

 そんな中、北米パナソニックが米ラスベガスで開催中のCES記者会見で、コロラド州デンバー市と提携し、「シティ・ナウ」という市全体のエコシステムを請け負う、という壮大なプログラムを発表した。デンバー市だけではなくローカル企業とも連携し、市を「よりサステイナブルでエネルギー効率が良く、コミュニティ精神にあふれ、アクセスが良く、水の節約も行い、公共の安全を重視し、ヘルスケアその他の公共サービスにもすぐれた場所にする」という。

 会見にはデンバー市長マイケル・ハンコック氏も駆けつけ、「デンバーは若者を中心に全米で最も人口増加のペースが高い都市。そこに住民と市の公共サービスをリアルタイムで結びつけ、最新のテクノロジーによって住みやすく生活しやすい場所に変化させていくのは非常に意義のあること」と語った。

 北米パナソニックCEOジョゼフ・テイラー氏も「パナソニックの技術と経験を活かし、サステイナブルでスマートな都市作りに参画できるのは非常に光栄なこと。パナソニックは技術改革のために技術を開発するのではなく、人々の生活を改善するための技術提供を重視している」と説明した。

 シティ・ナウの第一歩はデンバー国際空港近辺のインフラ整備から着手される。人々はモニターなどによりリアルタイムの市のサービス、公共交通情報などを入手できる。このインフラは電力とも連動し、人々の動きに合わせて照明が点く、など人の存在を感知して反応する様々なインフラが提供されるという。

 この目標到達のため、地域エネルギー会社であるエクセル・エナジー社がマイクログリッドを提供、ソーラーフォトボルテック発電とリチウムイオン蓄電装置により必要な電力を必要な場所にこまめに供給する。マクログリッドは1.3メガワットACソーラーカーポートシステムと1または2メガワット蓄電システムからなり、「実現すればコロラド州の歴史の中でもっとも優れたエネルギー供給システムとなる」という。

 この計画のためにパナソニックでは新たにパナソニック・エンタープライズ・ソリューション・ハブとなる建物、「ザ・ペニャ・ステーションNEXT」を空港付近に建設中で、実験的にスマートストリートLEDライトを設置する。人や車の動きに合わせて照明や信号が点灯するシステムをビデオ分析することで、例えばパーキングの管理、空港付近の交通分析、セキュリティその他の将来的なサービスにつなげることが可能となる。

 さらにペニャ・ステーションNEXTではヘルス・アンド・ウェルネス・センターも提供し、フィットネスや健康関連の教育などを地域住民に提供する。重要疾患を持つ患者に対し、バイオメトリック技術を使ったモニタリングサービスや、在宅で医師とのコミュニケーションが取れるシステムも提供されるという。

 将来はパナホームの経験を活かしたエコ住宅、スマートホームシステム、オフィス用のエコビルディング、車載コミュニケーションシステムとの連携なども視野に入れ、まさにデンバーという市全体を「パナソニックブランド」にする、という壮大な試みだ。

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著者

土方細秩子(ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

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