一般財団法人の化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が約40年にわたり国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し組織的な隠ぺいを図っていた問題で、政府は1月8日、化血研を110日間の業務停止処分とした。同日午前の記者会見で塩崎恭久厚生労働大臣は「本来であればただちに医薬品製造販売行の許可を取り消すべき事案。今後については製造販売を化血研という組織で継続することはしない前提で検討することを要請している」として化血研の解体を示唆する発言をした。
1月14日には非公開の第1回ワクチン・血液製剤産業タスクフォースが開催された。出席者リストには塩崎大臣や事務次官までもが名を連ね、事態の重さを窺わせる。タスクフォースは業務停止の110日間の間に話し合いを終わらせ、4月にもその結果を発表する見込みだ。
化血研は血液製剤だけでなく、日本における主要なワクチン製造者としても知られている。塩崎大臣が化血研の医薬品製造販売許可を直ちに取り消しとしない理由を「化血研だけが製造している国民の健康確保に不可欠な血液製剤やワクチンがあるため」としているとおり、化血研は定期接種である4種混合ワクチンやインフルエンザワクチンを製造するほか、国内で使用されるA型肝炎ワクチンの100%、B型肝炎ワクチンの80%を生産している。
日本では定期接種ワクチンの大半を、民間の製薬会社ではなく、財団である化血研、阪大微生物病研究会(微研)と、北里第一三共ワクチン株式会社の3組織に製造させてきた。北里第一三共ワクチンも2011年4月以前は学校法人・北里研究所であり、財団と学校法人は非営利法人として似た組織文化があるといわれている。
定期接種用ワクチンは、自治体が買い上げる仕組みになっているが、その本数は安定しており、納入価はどこの製品であってもなぜか同じ。カルテルではないかとの声もあるが、「価格変動も競争もない日本のワクチン市場は統制経済に基づく国家事業のようなもの」と業界関係者は口をそろえる。
いま業界では化血研の血液製剤部門は日本血液製剤機構(JB)に統合されるだろうとの見方が強いが、ワクチン部門はどうなるのか不透明だ。
あるワクチンメーカーの幹部は「化血研をそのまま引き取りたい民間企業なんてどこにもいないですよ。中に居るのは九州の決まった有名大学の出身者ばかりで、人の出入りもほとんどない。そんな硬直化した組織の公務員みたいな人たちとビジネスなんてできるわけない」と語る。また、先述の3つの非営利法人のひとつと提携したある製薬企業の社員も「設備投資分をどう回収するかといったコスト意識はゼロ。助成金を得たらそれで終わりという意識で、利潤を追求する気は全くない」と語った。