家電口論

2016年1月27日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

家電評論家

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 前回、独ミーレを数字で確認しました。今回は、製品で確認してみたいと思います。

ビルトインキッチンの前身にあたる、ミーレ、Fitted kitchen(フィッティド・キッチン) “Studio-M”(1969年発売)。これが意味することとは・・・(本文3頁に続く)

ミーレのエピソードが語ること

 前回ロックコンサートと共に旅するミーレ洗濯機のエピソードを書きました。先頃亡くなった、D. ボーイも利用したのかも知れないと思うと、1ファンでもありますので、込み上げるものもあります。

 それはさておき、この旅する洗濯機は、ミーレが、ほぼ世界で唯一の高級家電と称される理由の1つを如実に表しているのです。

100年持たねぇ

 昭和の名人と賞された落語家、三代目・桂三木助の得意噺に「三井の大黒」があります。

 大工の神様とまで賞された左甚五郎が江戸に出てきたときの話です。京都から江戸に来た左甚五郎は、ひょんな事から、江戸の大工・政五郎の家に居候します。ただわけありで甚五郎ではなく、名前を忘れた渡り大工としてですが。
暮れも押し迫ると、江戸の大工は、本業とは別に、余った板でちりとり、雪かき、踏み台をなどを作って、酉の市などで売り、餅代に当てたようです。その様な噺は次の様な感じです。

 「このあいだね、あっしが踏み台をこしらえていたらね、(甚五郎が)見てやってね。この踏み台は100年持たねぇ。って、あたりまえじゃないか! 長生きする野郎だと思ったね、あっしは。踏み台が100年も200年も持つかッテいうんだ!」

 何気ない触りですが、名人のエッセンスここにありという感じですね。流石に、世界遺産を作り上げる人は違いますね。

 昔から、いいモノは「丈夫で長持ち」するのです。

ミーレの選択

 長い歴史を持つ会社は、必ず幾つかの大きな判断を求められることがあります。その中の1つは、どんな製品がイイかということです。

 ミーレが下した判断は「品質がいいこと」。当然、丈夫で長持ちなことは入ります。

 具体的に言うと、ミーレは20年間、壊れずに使えることを想定して設計されています。そのために、普通のメーカーが樹脂を使う部分に金属を使う。
金属だと値も張りますが、長く使えます。

 別の例を挙げましょう。

 今は違いますが、昔、録画にビデオテープが使われていた時代がありました。その技術を応用したモノが、一般民生用としてVHS、βですから、30代以上の人は馴染みがあると思います。

 さて、放送局用のビデオテープと、一般用ビデオテープ(ハイグレード)どちらが画質はイイか、ご存知の方はいらっしゃいましょうか? 唖然とする人もいらっしゃるかも知れませんが、答えは僅かながら一般用ビデオテープが上なのです。

 ビデオテープの特性はいろいろな要素のバランスが取れて成り立ちます。つまり、Aという特性を落とせば、Bという特性を上げる余地が出てくる。つまり、画質を落とすと別の特性を引き上げることができるとお考え下さい。

 業務用のビデオテープが選択したのは、地上のどんな所でも録画できるタフネスさです。お金を掛けて、南極へ取材に行く。寒さでテープが止まりました。南米のアマゾンへ行く。湿度でテープが止まりました。それでは、プロの道具として務まりません。

 そうなのです。

 ミーレは品質を追い求めます。設計を、素材を、工程を吟味して、品質を上げます。その結果がタフネスを含む高品質。都市伝説のようなミーレのエピソードも、それを裏書きするモノです。ミーレは高級家電と称されます。念には念を入れた高品質な作りが理由の1つだということが分かります。

 高品質にこだわるミーレは、いろいろな素材も自社内でかなり作り込みます。溶鉱炉ですら持っています。鉄鋼事業部を持っているわけではなく、自社製品をよくするための溶鉱炉です。

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