世界の記述

2015年12月29日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 サッカーの南米スター選手、メッシやネイマールの脱税、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職、さらにロシア陸上連盟のドーピングと、このところスポーツ界の“てんこ盛り事件”が相次いでいる。こうしたスキャンダルは、今に始まったことではないが、近年、その傾向が随分際立つ。なぜ欧米諸国では、こうした事件が日常茶飯事で、日本ではあまり耳にしないのか。

5月にスイスで行われた記者会見に出席したFIFA幹部ら。中央に座るブラッタ―会長には8年間の資格停止処分が下された(Getty Images)

超高級取りのスター選手が脱税する理由

 スペインの司法当局は昨年10月、サッカーの世界最優秀選手賞を4年連続受賞したアルゼンチン代表FWで、スペイン・バルセロナに所属するメッシに対し、懲役1年10カ月の求刑を下した。メッシとその父が、2007〜09年の3年間に410万ユーロ(約5億5000万円)の脱税を働いた疑いがかけられたからだ。

 ブラジル代表FWで同クラブ所属のスター選手、ネイマールも同じく昨年11月、サンパウロの裁判所から財産凍結を命じられている。海外からの収入を過少申告し、6300万レアル(約19億円)の脱税疑惑が持ち上がったためだ。

 年間数十億円単位の年収を得る欧米の超高給取り選手たちが、このような犯罪に手を染めるのは、ごく当たり前と言えるのか。

 スペイン主要紙エルパイスのヘスス・ガルシア司法記者は、こう話す。

 「選手を取り巻く顧問や膨大な額が問題。特に南米やスペインでは、脱税行為自体を重く受け止めない傾向やお国柄があるのではないか」

 世界中のサッカー連盟や協会を取り仕切るFIFAの汚職も、強烈な印象を与えた。昨年5月、24年間で185億円に上る贈収賄があったとし、米連邦捜査局(FBI)が、幹部14人を起訴。現在、ブラッター会長も活動停止処分を受けている。

 アメリカ政治アナリストのエリック・ドレイツァー氏は、ロシアのテレビ局RTで、「FIFAの事件は、スポーツや汚職とはほど遠い話」と語る。

 「これはアメリカとヨーロッパの政治ゲーム。政治や戦略の利益のためのプロパガンダとデマゴーグに過ぎない」

 つまり、スポーツ云々ではなく、欧米での政治の利権争いが繰り広げられているというのだ。

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