2024年12月7日(土)

世界の記述

2015年12月29日

 サッカーの南米スター選手、メッシやネイマールの脱税、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職、さらにロシア陸上連盟のドーピングと、このところスポーツ界の“てんこ盛り事件”が相次いでいる。こうしたスキャンダルは、今に始まったことではないが、近年、その傾向が随分際立つ。なぜ欧米諸国では、こうした事件が日常茶飯事で、日本ではあまり耳にしないのか。

5月にスイスで行われた記者会見に出席したFIFA幹部ら。中央に座るブラッタ―会長には8年間の資格停止処分が下された(Getty Images)

超高級取りのスター選手が脱税する理由

 スペインの司法当局は昨年10月、サッカーの世界最優秀選手賞を4年連続受賞したアルゼンチン代表FWで、スペイン・バルセロナに所属するメッシに対し、懲役1年10カ月の求刑を下した。メッシとその父が、2007〜09年の3年間に410万ユーロ(約5億5000万円)の脱税を働いた疑いがかけられたからだ。

 ブラジル代表FWで同クラブ所属のスター選手、ネイマールも同じく昨年11月、サンパウロの裁判所から財産凍結を命じられている。海外からの収入を過少申告し、6300万レアル(約19億円)の脱税疑惑が持ち上がったためだ。

 年間数十億円単位の年収を得る欧米の超高給取り選手たちが、このような犯罪に手を染めるのは、ごく当たり前と言えるのか。

 スペイン主要紙エルパイスのヘスス・ガルシア司法記者は、こう話す。

 「選手を取り巻く顧問や膨大な額が問題。特に南米やスペインでは、脱税行為自体を重く受け止めない傾向やお国柄があるのではないか」

 世界中のサッカー連盟や協会を取り仕切るFIFAの汚職も、強烈な印象を与えた。昨年5月、24年間で185億円に上る贈収賄があったとし、米連邦捜査局(FBI)が、幹部14人を起訴。現在、ブラッター会長も活動停止処分を受けている。

 アメリカ政治アナリストのエリック・ドレイツァー氏は、ロシアのテレビ局RTで、「FIFAの事件は、スポーツや汚職とはほど遠い話」と語る。

 「これはアメリカとヨーロッパの政治ゲーム。政治や戦略の利益のためのプロパガンダとデマゴーグに過ぎない」

 つまり、スポーツ云々ではなく、欧米での政治の利権争いが繰り広げられているというのだ。


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