ポーランドのチョコレート業界は蜜月を迎えている。生産量は毎年確実に増加し、輸出のほうも順調な伸びを見せている。2012年度には約2億2000万ユーロの売り上げだった市場が、2015年度は四半期の段階で既に2億8000万ユーロの売り上げ数値をたたき出した。
歴史あるポーランドのチョコレート
この国の歴史にチョコレートが登場するのは18世紀、最後のポーランド王が宮殿から逃げ出す間際に食べかけのチョコレートを置き忘れたことから始まるといわれている(ちなみにこのチョコレートは今現在もクラクフの博物館で閲覧可能)。しかし一般の人々に広まったのは19世紀半ば、Karol Wedel (カロル・ヴェデル)がワルシャワで飲むチョコレートの店を開いたことだ。この店はその後人々の需要に押されて瞬く間に成長し、Wedelという名のチョコレート店の第1号となった。その半世紀後にはポーランド南にWawelという別のチョコレート会社が建ち、150年以上も経つ現在もこの2つの会社は国内チョコレート業界の老舗大手となっている。
かつては主にソ連邦の衛星国にチョコレート菓子を輸出していたポーランドだが、冷戦崩壊後の1989年を境に増産に踏み切った。しかし世界の市場は既に旧西側諸国の会社が握っており、そのマーケットに参入するのは容易なことではなかった。それでも質と価格での競争努力の結果、当初ランク外だったEU内での生産量は現在6位にまで上りつめた。
中国市場への攻勢
この国の製菓市場の売り上げ額の半分は輸出によるものだ。2014年度のチョコレート、カカオ加工品での主な輸出先には、数年間不動のイギリス、ドイツに続き3位に中国が踊り出た。現在ポーランドが同国に輸出する食料品項目の40%弱はこのチョコやカカオ加工品が占める。その数値を裏付けるかのごとく前年度比で対中国輸出額が14倍という驚異の伸びを見せている。
ヨーロッパ人は自国産のチョコレートの味を好む傾向があるため、EU内で更なる増益を見込むのは難しい。英・独で売れるのはこの2カ国にポーランド系移民が多数いるためと言われている。しかし中国にはそのようなチョコレートへの嗜好的なバリアがない。その上この国の5~6億人いるといわれる中流階層は新しいものに貪欲で、食の安全面やスノッブ感覚で欧米製品を好むという事実がチョコレート産業の追い風となった。ちなみにこの風に乗ったのはチョコレート業界だけに限らない。ポーランドの食品業界は、乳製品や食肉、果物に及ぶまで広い範囲で輸出を拡大し中国市場に攻勢をかけている。