英国は一部の公立校で中国語を選択科目化する取り組みを始めている。
英国の中等学校では、伝統的には第二言語はフランス語を履修。2013年で見ると、15~16歳の生徒が受験する義務教育修了の資格試験(GCSE)で、フランス語を受験した生徒は約17万7000人で、スペイン語が約9万1000人、 ドイツ語約6万2000人に対して、中国語はわずか約3000人。中国語の基本会話をできる成人は1%にも満たないと推計されている。
こうした状況を打破しようと、キャメロン首相は13年に訪中し、小学校を訪問。「現在の子供たちが卒業するころには、中国は世界一の経済大国になっている。将来のビジネスを確実なものにするため、英国の若者は将来を見据えて、中国語を身に付けるべきだ」と公言した。
英国の公立校の中国語教員のアシスタントを倍増させ、教材費用など学校側の負担を補助することを約束。さらに小中学校の校長60人を中国研修に派遣することも決め、中国語教育の本格導入にかじを切った。
13年からはロンドン市内の公立小学校として全国で初めて、中国語と英語のバイリンガル学校の開設を準備中。また14年、中国の教員を数カ月間招き、全国の公立中等学校で中国語の授業を担当してもらった。まさに「相手国の懐に飛び込むには、まず言語」(キャメロン首相)で、なりふり構わず将来の世界一の経済大国との蜜月関係をたぐり寄せようとしているのが実態だ。
第二言語に力を入れる背景には英国独特の事情もある。英国には多言語を操れる成人が少なく、ビジネスで損をしてきたとの見方が根強い。金融街シティなどで、多言語を操れる英語圏以外の出身者が就職や転職、ビジネスで有利な事態が目立ってきているのだ。
今回、訪英に同行した習主席夫人は、ロンドン市内の公立中等学校を訪問したが、中国語による歌とスピーチの歓待を受け、満足気だったという。夫人は「全部の言葉を聞き取れた。すごく上手」とほめつつも、「中国に来たらもっと上手になる」と一押しを忘れなかった。中国はすでに英国内で、中国語学校の孔子学院を欧州で最大の約30校も展開、アフリカなどでも拠点を増やしている。
言語・文化に踏み込んで外交攻勢をかけたい中国と、経済拡大の果実を取り込むため中国語の浸透を許す英国の思いは、一致している。
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