2024年12月22日(日)

ASEANスタートアップ最前線

2015年11月9日

 2001年、ITバブル絶頂の頃、ホリエモンこと堀江貴文氏は世間を賑わせた。ポータルサイトのライブドアを立ち上げ、ニッポン放送の買収をしかけ、連日マスコミが報道していたことを鮮明に覚えている。15年も前のこととはもはや思えない。出所後の現在も、メディアに積極的に出演し、宇宙事業や自身のメディア事業を手掛け、投資家としても活動されている。

 IT時代の寵児は、何も日本に限った話ではない。ここ、東南アジアにおいてもライブドアのように成功した企業がある。CATCHAだ。ポータルサイトからスタートし、事業成功後に積極的な事業投資へと転身した点や時期がライブドアと似ている。創立者のPatrik氏はこちらでは象徴的な存在で、今でもメディアから引っ張りだこだ。日本人の私としては、どことなく、ホリエモンと被って見えてしまう。

 11月3日、スタートアップ業界に激震が走った。CATCHAが手掛けてきたきた不動産ポータルサイトiPropertyが約700億円でオーストラリアのREA企業に買収された。ASEANのスタートアップでは最大規模のM&Aである。こちらでは、CATCHAといえば誰もが認める、正に「最強」の名にふさわしい一流の投資会社だが、日本のメディアはほとんど注目していないようだ。

 旧来、VCというよりはPE(プライベートエクイティ)として活躍していたがCATCHAは2015年4月、CATCHA Venturesを立ち上げ、VC業界に参入している。そこで、今回は、伝説の投資集団CATCHAとは一体何者なのか? 投資チームを率いるErman氏に話を聴きながら、その真相に迫った。

「CATCHA」のロゴマーク

ポータルサイトから投資会社の転身へ 
~CATCHAグループの誕生~

 CATCHAの物語は、マレーシア人のPatrik Grove氏が1999年に起ち上げたCatcha.comから始まる。Catcha.comは、言うならば東南アジア版のライブドアのようなウェブポータルサイトだ。IPO寸前までいったが、ネットバブル崩壊の影響を受け、IPOには至らなかった。しかし、PatrikはCatcha.comの事業から莫大な資金を得た。

 この資金を活用し、投資会社として転身し、今のCATCHAが在る。投資対象として最初に目をつけたのは、不動産のポータルサイトiPropertyだった。iPropertyがローンチし、事業が軌道に乗った辺りで、CATCHAは株式の大半を獲得した。CATCHAのすごいところは、株式を保有した後、CATCHAから経営人材を送り込み、事業を徹底的にドライブさせるところだ。Property Guruと双璧を成すASEAN最大級のポータルサイトに成長させ、2007年、オーストラリア証券取引所に上場をした。

 上場は一つのゴールの形に過ぎないが、iPropertyを成功させた後のCATCHAは、ハンズオン型の投資会社として成功企業を次々に生み出していく。不動産ポータルサイトの次に目を付けたのは車情報サイトだった。

 ASEAN最大級の車ポータルサイトiCarを成長させる。これまた2012年、オーストラリア証券取引所で上場した。これ以外にも、フラッシュセールサイトのENSOGO、メディア企業のREV Asiaを手掛け、それぞれオーストラリア証券取引所、マレーシア証券取引所に上場させている。更に現在では、iFlixに投資、積極的に事業拡大を支援している。今年、日本に上陸したNETFLIXと同じ、オンデマンド型のビデオストリーミングサービスだ。

 「関与した企業は必ずハンズオンでさせる。」CATCHAのすごさはここにある。


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