2024年12月4日(水)

ASEANスタートアップ最前線

2015年9月12日

 本連載第一回目のレポートでも特集した、マレーシア政府肝いりのインキュベーション施設MaGIC(Malaysian Global Innovation & Creative Centre)。東南アジア最大級のインキュベーション施設は、首都のクアラルンプールから車で30分ほど離れた郊外都市、サイバージャヤにある。空港に近いのは便利だが、決して都会のど真ん中ではない。日本の首都圏でいえば、幕張の様な存在、といえばイメージして頂けるだろうか。

 今回の記事では、そのMaGICのコワーキングスペースで起業に挑んでいる唯一の日本人である三上高博さんを尋ねた。三上さんは、ここサイバージャヤで、Samurai Internetという会社を立ち上げ、新築の不動産情報サイトを現在準備中だ。

MAGICの前で。三上さん(左)と、インターンの紺野さん(右)

 日本人が東南アジアで起業する! というと、タイやフィリピンのセブ島、そしてシンガポールが多い印象があるが、なぜマレーシア、しかもサイバージャヤという土地を選び、起業をしたのかーー。三上さんのライフストーリーに注目したい。

 

ベンチャー企業で会社の成長と自分の成長を重ねる

 大企業への就職がまだまだメジャーで人気があったころ、三上さんは、周囲の友人とは異なり、実力を身に着けようと、成長の著しいベンチャー企業へ就職を希望した。そして、希望通り、当時爆発的な成長を遂げていた介護業界の会社へ就職する。成績を収め、3年後に管理職となった三上さんは、更なる経験を求めていた。そこで出会ったのが、介護業界の求人サイトを運営するエス・エム・エス(SMS、東京都港区)だ。三上さんは、迷わず、介護×ITの分野に飛び込むことを決断した。

 当時はまだ3期目だった。日本の高齢化という人口動態に加え、介護保険の適用という政府の後押しもあり、売上は爆発的な伸びを記録していた。僅か数年後にマザーズに上場、そしてその後、東証一部にまで上り詰めた。三上さんは、SMSでの経験が非常に有意義だったという。

 「勝てるマーケットの選び方と、競合との差別化を徹底することで、競争社会でもしっかりと勝ち切れるということを学びました。」

 会社の成功と自分の成功体験を重ね合わせることができた。この成功体験の積み重ねが、起業を決断する礎になっているという。

介護業界の中から見えてきた日本の限界

 人生のどこかのタイミングで起業したい!と思っていた三上さんは、SMSを退社後、日本でプチ起業をしたり、マーケットのリサーチをしたりと、積極的に事業機会を探していた。しかしながら、介護業界に身を置いていたからこそ、三上さんは、人口が減少し、ますます高齢社会になる日本社会に、成長の限界を感じていた。

 そこで、2年ほど前から、日本以外のマーケットも見るようになったという。ここでも、三上さんはSMSで培った「勝てるマーケットの選び方」を徹底した。マーケットの成長力と、自身の経験から勝てそうな領域、そして実現可能性を掛け合わせると、アジアが最もフィットするとの結論に至った。エリアをアジアに起業すると決めるや否や、視察に現地を訪問した。

 マーケットチャンスと住環境、生活コストの低さからマレーシアでの起業を決意
持ち前の行動力でアジア数か国を周った後、三上さんが選んだ国はマレーシアだった。マレーシアに決めた理由は「マーケットチャンス」と「家族が帯同できる場所」だった。


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