世の中には、想像を超えるほど、ピカピカしたキャリアレコードを持つ人がいる。Kelvin Teoもその一人だ。マレーシア国籍でシンガポールのPR(永住権)を持つ彼は、NUS(National University of Singapore・シンガポール国立大学)を卒業後、マッキンゼーにKKRキャップストーンと、誰もが羨むキャリアを歩んだ。
そしてハーバードビジネススクール(以下HBS)に入学。卒業後の就職にも何も困らないであろうに、彼は、次のキャリアに「起業」を選んだ。HBSに在学中、シンガポールを拠点に、SME(Small Middle Entreprise-中小企業)向けのソーシャルレンディングプラットフォームFundingSocities(https://www.fundingsocieties.com/)を設立し、6月からサービスを開始している。
独自のアルゴリズムで企業を評価し、銀行よりも早く、無担保で貸し付けを行う。初速の成果はまずまずだ。先日シンガポールで開催されたTIA(Tech in Asia)のピッチイベントでも優勝し、9月8-9日、渋谷ヒカリエで開催されるTIA Tokyoにも参加が決まっている。
Kelvin Teoは、エリートキャリアから起業を選択した、世界中が注目する起業家の一人だ。
NUSでの留学経験が起業への原体験
起業家に対する私の興味は、「いつ起業しようと思ったのか?」という心の転換点だ。起業を元々考えていたけれども、大手企業に入社したのか、それとも、初期は全く考えていなかったが、次第に起業への意欲が高まったのか? その心境の変化を知りたいと思った。まず、私は彼の大学生活から質問した。Kelvinは、当時NUSの学生だった時に、一年間の交換留学プログラムで渡米するチャンスを得たそうだ。
UPEN(University of Pennsilvania)でアントレプレナーシップを学び、また現地でインターンシップの機会を得て、IT系スタートアップで働く経験をした。非常に面白かったが、当時は起業に対する意欲はそこまで強くはなく、「興味があった」というレベルだったそうだ。
では、いつ、起業への意欲が高まったのか?彼は、プロフェッショナルファームで仕事を続けるうちに、徐々に高まっていったとのことである。
Kelvinは、NUS卒業後、世界的に有名な経営コンサルティングファームであるアクセンチュアやマッキンゼーで経験を積み、その後世界最大級のプライベート・エクイティファームであるKKRの投資先企業専属のコンサルティング会社・KKRキャップストーンに転籍した。グローバルなプロフェッショナルファームでは、個人では動かしえない規模のビジネスに関わることができる。誰もが羨む環境で、彼は次のように思った。
「仕事には個人の裁量に限界があった。仕事をこなせばこなすほど、よりビジネスに対してオーナーシップを持ち、ソーシャルインパクトを起こしたくなった」
そして、起業への意欲が高まる中、彼はハーバード大学のMBAプログラムであるHBSへの進学を決断した。