WOGEN Resourcesの創設者コリン・ウィリアムズ氏が去る6月30日に自宅で死去した。73歳だった。レアメタル取引の世界では最も著名なトレーダーの一人であった。
私がレアメタル商社を目指したのにはこの人物の影響があった。コリンはロンドンのウエストミンスターにあるサンクチュアリーにWOGEN本社を設置した。1972年に設立して以来、世界13カ所に支店をおいて多くのレアメタルトレーダーを育て、グローバル時代に相応しいレアメタル取引を推進した。コリンは典型的な英国紳士である。英国パブを愛し、ラグビーを愛し、英国文化を愛し、中国を愛し、旅を愛し、そしてレアメタルを愛した。
レアメタル市場をリードしたWOGEN
ラグビーチームのような会社とは?
僕が日本でメタルトレーダーを始めたのは前職の蝶理にいた時期である。1980年代にはWOGENのビジネススタイルを参考にしてレアメタルビジネスにのめり込んでいった。その頃にWOGENの社名の由来は、中国の五金(ウージン)の名前をとってつけた社名であるとコリンから聞いた。五金とは金・銀・銅・鉄・錫の5種類の金属という意味である。当時、WOGENは中国の対外貿易部傘下のMINMETALに対してニッケルや非鉄金属の大半を扱っていたようだ。
コリンはラグビーが好きでWOGENをラグビーチームのような会社にしたいと思ったようだ。未だに主力トレーダーの数は15人ぐらいで(世界の支店を入れると総勢60人)、確かにラグビーチームのような会社だった。むやみに社員数を増やさず、真のプロフェッショナルだけで闘うのがコリンの流儀であった。社員の独創性を生かしアイデアを尊重するがゆえに売買行為をトレーダーに集約させる考え方もラグビーを愛するコリン的発想である。
英国流の正義と不正とは?
コリンが対中貿易を始めたのは、1972年のニクソン大統領と毛沢東との歴史的会談よりもずっと早い時期であった。コリンは1960年代から前職のルドルフ・ウルフ時代に中国によく通った。当時は中国との貿易は少なく年に2回だけ広州交易会を通じて商談が行われた。
コリンがWOGENを設立する前の話だが、香港と広州との間の電信ライン(当時の通信手段はケーブルしかなかった)を一定期間独占して、ロンドン金属取引所の価格を相手に知らせず取引を一方的に有利に導いた。
僕は英国人らしからぬ姑息なやり方なので「アンフェアではないか」と、いったら「Not illegal」(ルール違反ではない) と顔を歪めて笑っていた。
こんなところにも英国的なコリンの独特のスタイルがあった。彼にとってはビジネスもゲーム感覚の部分がありルールさえ守ればやり方は自由なのである。
日本人が何が何でもコンプライアンス(法令遵守)は守らなければならないと考えるのに対して、英国的な発想は法律の抜け穴もルールの中にあると考えるから、日本人はいつも貧乏くじを引かされることが多い。