通常、日本の非鉄金属業界はベースメタルが中心でレアメタルは付けたしであったが、当社がレアメタルに特化して起業をしたことが2003年以降の資源ブームと相まって時代の流れに乗ったと確信している次第だ。そんな訳でAMJが日本初のレアメタル専門商社と呼ばれたのはWOGENのお蔭かもしれない。
ハイリスク、ハイリターンに賭ける英国魂
コリンはWOGENの取扱品目についてリスクをとりすぎる事に結構神経質だった。1980年代から90年代にかけてコリンのパートナー、WOGENでNo.2のニック・フレンチというトレーダーがいた。ニックの専門はコバルトだったが、僕はニックと組んでコバルトのオプション取引で大儲けしたことがある。コバルト相場が投機的動きをしている時期だったので、僕はリスクをヘッジするためにWOGENに保険をかけるのだが、ニックはかなりのリスクを張っていたようだった。
1988年から89年にかけてだったと記憶するがWOGENの取引先別売上のNO.1が僕だった時期にコリンとニックは経営方針の違いでよく口論をしていた。
ある日の事であるが、ニックと一緒にとあるパブで飲んでいる時に偶然ながらコリンと鉢合わせしたことがある。何となく気まずい雰囲気であったが、お互いに大人であるからその場はビールを酌み交わして別れたが、しばらくしてニックはWOGENを退社した。どうやら僕の方はニックのお蔭でコバルトビジネスで大儲けをしたのだが、ニックの方はかなりの損失を出したようだった。無論、お互い何も言わないが、レアメタルビジネスはハイリスクハイリターンの一面が強いのだ。
コリンは思慮深い性格だがニックは派手なビジネスを好んでいた。僕は多くの多様性のあるWOGENのトレーダーにもまれて良い勉強になったと思っている。すでにWOGENを退社したがニック・フレンチ、アンソニー・リップマン、ダグ・ハルス、アラン・カー、ナイジェル・ツゥナ、ドミニク・ボイル、などレアメタル業界をリードする錚々たるOBメンバーに恵まれている。
英国紳士にとってはビジネスも人生もゲームなのか?
コリンは非常勤の会長になってからもサンクチュアリーの本社には顔を出していた。毎日、高級なチタン製のマウンテンバイクで出勤していたが、チタンビジネス以外はあまり口を出さなくなっていた。
ビジネスよりもハンティングとかスポーツの話題が中心で60代半ばにして息子の世代に経営権を渡していったようだった。コリンにとってはビジネスも彼の人生もラグビーゲームの様なものだったのかも知れない。
心から尊敬する英国紳士の冥福を祈りたい。
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