ハーバードで起業の種と仲間を見つけ起業
ハーバードビジネススクール、通称HBS。楽天の三木谷浩史さん、ライフネットの岩瀬大輔さんなどを輩出する、言わずもがな世界最高峰のビジネススクールである。Kelvinのように、一流企業で成果を挙げる若手ビジネスマンが毎年約1000人入学し、ボストンに集結する。HBSに行くことはメリットばかりではない。卒業までにかかる経済的負担は約2000万円に及び、働き盛りの2年間を勉学に費やさなければいけない。金銭的にも、時間的にも、多大なコストを払わなければいけない。
このコストを回収するため、マッキンゼーやGoogle、投資銀行やヘッジファンドなど、高給が約束された場所に、卒業後就職する者も多い。そして、こうした高給の職場を狙って、1年目と2年目の間の夏休みは、それらの企業でインターンシップをするのが普通だ。しかし、Kelvinは違った。彼は一年目の在学中に起業をし、6月にサービスをローンチした。他の学生がインターンシップに勤しむ中、彼は自分のビジネスに集中した。
私は彼に直球の質問をしてみた。
「ぶっちゃけ、起業する(した)のに、HBSに行く意味はあるのか?」
彼は、HBSに在籍することについて、3つのメリットがあると言う。一つ目は、HBSは質の高いタレントプールだということだ。実際に、共同創業者のReynoldは、HBSの同級生だ。通常の採用ルートでは獲得することのできない高度人材を招き入れることができる可能性がある。
二つ目は、HBSの豊富な、そして上質なビジネスリソースだ。Kelvin自身も、同窓会ネットワークを使い、ビジネスパートナーを実際に見つけることができたという。HBSの卒業生が創るネットワークがビジネスにポジティブな影響を及ぼすのは、どうやら間違いないらしい。
三つ目は、経営者としてのトレーニングだ。ビジネスを経営する上で、HBSの授業は良い訓練になる。
「ビジネススクールは時間と金の無駄」と言う者も多いが、ビジネススクールの学生に必要なリソースを提供し、数多くの起業家を輩出しているのもこれまた事実だ。
まだまだ課題はあるが、「想定の範囲内」
実際、起業をしてみて、大変だったか? という質問をしてみたが、彼の答えは、私の想定を覆すものであった。
「だいたいのことは、これまでのビジネス経験から予期していたものであった。実際、マッキンゼーでは戦略、KKRではエクセキューション(執行業務)のキャリアを積んでいたため、その経験が糧になっている」
投資家の視点からすれば、なんとも頼もしい言葉である。通常、ビジネスアイディアの次にチームビルディングに苦戦するスタートアップが多いが、FundingSocitiesはタレントぞろいの強いチームができている。HBSの同級生Reynold以外にも、優秀なタレントをうまく採用できているが、そのコツについても聞いてみた。「採用チャネルは求人サイト、友人の紹介、ヘッドハントの三つが主にあるが、どれか一つのチャネルに依存するのではなく、同時並行で進めながら、多角的な視点で採用を進める」ことが良いチームを創りだす秘訣だという。