2024年6月17日(月)

ASEANスタートアップ最前線

2015年11月9日

CATCHA Venturesの誕生
Private EquityがVenture Capitalに参画する
理由とは?

 Private EquityもVenture Capitalも、個人や機関投資家から資金を集め、企業に投資(株式購入)をして、企業価値が高まった後でM&AやIPOにより売却、キャピタルゲインによって報酬を得るファンドビジネスであることには変わらない。様々な定義の方法があり、両者の境目は曖昧だが、ここではVenture Capitalは企業の創業期に出資をし、株式の保有割合は比較的少ない形態をとるファンドに対し、Private Equityは、企業の成長期から成熟期に出資をし、株式の大部分を取得する形態をとるファンド、としよう。

CATCHAのオフィス

 CATCHAはこの意味で、Private Equityの形態をとっていたわけだが、2015年4月、CATCHA Venturesを立ち上げ、よりアーリーステージの企業に投資をしていくことを発表した。なぜか? Erman氏は次の様に答えた。

 「10年前と今のIT業界の決定的な違いは、創業メンバーが10年前よりもずっと洗練されており、優秀であるということだ。10年前は、PEという形で大部分のシェアを我々が取得し、彼らをリードする必要があった。そしてその戦略が機能した。しかし、今現在、そしてこれからは違う。我々がこれまでリードしてきたステージにくる企業は昔よりもはるかに優秀だ。つまり、よりハンズオフでも企業が成長できるということだ。そこで、我々はCATCHA Venturesを立ち上げ、より早い段階で、より多くの企業に投資することを狙っていきたい」

 この傾向は、CATCHAだけに限った話ではない。我々も、毎週何十件という投資案件を見ている中で、まだ売上がたったばかりのシードステージからシリーズA前のラウンドに、Private Equityとして名前が通っているファンドが投資家リストに連ねる場合がまま見受けられる。

 一方で、Venture Capitalも、ファンドの規模が大きくなればなるほど、それぞれのファームがビジネス支援をするために、様々な人材を採用している。アメリカの大手のVC、特にアーリーステージに投資するシードアクセラレータは、投資チームだけではなく、経営戦略、人材、エンジニア、デザイン、マーケティングといったプロフェッショナルな人材を数多くインハウスで抱え、投資先の企業価値増大に向けた支援をしている。

 CATCHAは投資会社としては珍しく、マレーシアに拠点を置いている。Erman氏いわく、こだわっているわけではないが、これまで現地の投資先の支援に重きを置いていたという意味で、マレーシアはオペレーションしやすくベストだった。投資家の獲得という意味ではシンガポールが良いことは自明だ。とはいえ、実際には彼らは世界中を常に飛び回っているため、拠点の話など特に関係ないのかもしれない。

 私のソーシング担当国はマレーシア。この半年で、現地で活躍するスタートアップ200社を超える企業に会ってきたと思うが、CATCHAは現地でも伝説的な存在である。Erman氏はCATCHAの強さを、これまでの事業開発経験で培ってきた「東南アジアの市場理解」にあるという。

 ヨーロッパは、一国一国が小さくとも、言語が似ており、文化的、宗教的にも近いことから、地域展開がしやすい。何より、ヨーロッパ大陸でつながっているため、移動もしやすい。

 一方で、東南アジアはフィジカルに分裂している。この分断されたエリアのために、言語・宗教・文化はより多様化しており、ASEANという組織はありつつも、EUのような統一的な存在になるにはまだまだ時間がかかるのが現状だ。このような地域の中で、CATCHAは、iProperty、iCar、Ensogoなど、数多くの地域展開を成功させた経験・ノウハウがある。ひとたび「CATCHAが投資する!」となれば、市場がざわつくのも理解できる。

 世界トップティアの投資会社は、いかに世界を見据え、インパクトを与えてきたのか‐自分自身、非常に勉強になると共に、奮い立たせてくれたインタビューだった。我々日本人も、負けてはいられない。

※本連載では、シンガポールを拠点に、東南アジア全域で活動するベンチャーキャピタル、IMJ Investment Partnersの現地取材を通して、ASEANスタートアップの最新情報をお届けしております。本連載、並びにIMJ Investment Partnersへのお問い合わせはこちらからお願いします。

  
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