チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年2月12日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 のべ29億人が大移動するとされる中国の春節(旧正月)が実質的に幕を開けたのは1月26日のことだ。中国の鉄道、航空、バスはいずれも大増便をして備える。例年、民族大移動の混乱がテレビのニュース番組の目玉となる季節だが、今年の話題は少し違っていた。バイクと一緒に帰省させるサービスが人気となった。まるでフェリーのように地元駅までバイクを運び、乗客は最寄駅から颯爽とバイクを走らせる。意気揚々とバイクにまたがる出稼ぎ労働者たちの様子がニュース番組でも紹介されていた。

ニューヨーク・マンハッタンのチャイナタウンで行われる春節のパレード(iStock)

 かつて立錐の余地なく人が詰め込まれた3等列車の車内で、帰省する出稼ぎ労働者たちがみな、大人用オムツを付けたまま用をたし、数十時間も列車に揺られたことを思えば、わずか一部でもバイクと一緒に故郷に帰れるようになったのだから、まさに隔世の感だ。

 一方、切符の購入はここ数年、ネットでの予約購入が定着しつつあるようで、駅構内の混雑はいく分やわらいだという。

1年間のうっぷんを晴らす
そのエネルギーは世界に波及

 とはいっても帰省ラッシュ時に交通機関を覆う人口密度は相変わらず高く、1年間、苛酷な環境でハードワークを続けてきた出稼ぎ労働者たちの一群が、最後の試練とばかりにすし詰めの列車になだれ込み、この試練を越えて必死に家族のもとにたどり着こうとしている姿を見ると、産卵のために命掛けで川を遡上するサケやマスの群れを思い出さずにはいられない。

 春節期の移動でむき出しになるこうした人々のエネルギーは、移動にだけ発揮されるのではなく、消費にも向けられる。故郷では家族や親せきたちと大きな丸テーブルを囲み、まるで1年間のうっぷんを晴らすかのように連日宴会に興じるのである。そして、そうしたテーブルには、普段ならば絶対に口にすることのない高級食材がずらりと並べられるのである。

 この時期、中国のあちこちで噴出する凄まじい〝爆食〟のエネルギーは、国内の食料品の値段を大きく上下させるほどの勢いがあるのだが、ここ数年、その影響は海を越えて海外にまで及んでいる。そしていまでは海外の農業生産者の1年を占うまでになってきているのだ。

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