報道にはすべて裏がある

2016年6月7日

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 「想像はしていたが、かなり厳しい結果だ」

 沖縄政策に深く関わってきた政府高官はそう嘆いてみせた。6月5日に投開票された沖縄県議選のことだ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志知事の与党にあたる革新各党所属の候補や革新系の無所属候補は過半数を3議席上回る27議席を獲得した。改選前よりも3議席増やしており、地元紙の『琉球新報』は、6日付の朝刊1面で「与党大勝27議席」に加えて「辺野古反対31人」、「翁長県政に追い風」と見出しを打った。「31人」とは翁長県政与党の27人に加えて、野党ながらも辺野古移設に反対する公明の4人の議員をあわせた数字のことだ。

厳しい選挙戦

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 それでも自民党は13議席から14議席に1増しており、6日の記者会見で谷垣禎一幹事長は、「痛ましい事件があった中で大変厳しい選挙戦だった。こういう中では健闘した」と述べるなど、自民党内では善戦したとの見方があるが、保革がほぼ互角で拮抗してきた沖縄の政治史を考えれば、ここまで差がついたのはやはり敗北としかいいようがない。

 政府関係者が懸念するのは、辺野古移設作業への影響だ。菅義偉官房長官は6日の会見で県議選の結果を受けて、「日本を取り巻く安全保障環境が極めて厳しい中、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険除去を考えたときに、辺野古移設が唯一の解決策であるとの政府の考え方は変わりない」としてみせたが、果たして今後も強気の姿勢を保ち続けられるのか。

 考えてもみれば、政府・自民党にしてみれば、今回の県議選にあたって条件は極めて良くなかった。県議選の告示前には沖縄の県民感情を逆撫でするような無残な事件が起きた。20歳の沖縄の女性の遺体を雑木林に遺棄したとして、5月19日に32歳の米軍属が逮捕されたのだ。

 事件は、4月28日晩に嘉手納基地内にあるインターネット管理会社に勤務するシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)が沖縄本島中部のうるま市に住む20歳の女性を殺害後、遺棄したとされるものだ。殺害された女性はウォーキング中で、供述によると、暴行目的で2、3時間にわたって女性を物色していたシンザト容疑者が女性を見つけ、背後から棒で殴り、さらに首を絞め、最後は刃物で刺して殺害したという。

 逮捕されたシンザト容疑者は米国籍の元海兵隊員。米国のSNSのリンクトインに掲載された経歴によると、2007年から14年までの海兵隊勤務のうち11年まではキャンプ・キンザーなどの沖縄県内の米軍基地で装備品の管理などを担当していた。海兵隊を除隊した後は、海外の米軍基地でインターネットの管理などを請け負う米国の企業に雇用され、軍属という立場にあった。軍属とは、軍人ではないが米軍基地で勤務し軍務を支える民間人のことで、日米地位協定では、軍人および軍属の公務中の事件の裁判権は米国が持つとされる。このためたびたび問題となってきた経緯があるが、今回は公務外の事件だったため、地位協定上の問題は起きずに捜査は沖縄県警が行った。

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