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2016年6月25日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 英国民のみならず、世界の多くの人々にとって長い一日だった。2016年の6月23日は世界を変える引き金が引かれた日として多くの人の記憶に残るだろう。英国民はEUからの離脱を選択した。個人的には無謀な選択だと思うと同時に、世界的に、国家に対する人々の考え方が大きく変わってきている、という印象すら受ける。「国の体制の安定性は国民生活にとって大切」という多くの人が当たり前のように思い込んでいた常識がもはや通じなくなっている。

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きかなかった「常識のバネ」

 離脱をめぐる国民投票はこれまでもあった。1995年のカナダのケベック離脱問題、2014年のスコットランドの独立を問う住民投票である。投票の直前には離脱派が勢いを増して、一時「どうなるんだろう」という空気に包まれるが、最終的には僅差ながら残留が決まっていた。そこには国の体制維持に関するある種の「常識バネ」であり「現状維持バネ」が働いていた。

 安全装置といってもいいだろう。それが今回も作用するだろうと思ったが働かなかった。経済的には損失であることが明らかでありながら、あえてそうした選択をする。かつて自分が英国に住んだ経験から、社会の仕組み作りや企業経営の様々な場面で合理的な判断をする英国や英国人に敬意を抱いていたが、そんな思いは一瞬のうちに消え去った。

 英国人はどうしてこんなに賢明でない、冒険的な選択をするのかという思いでいっぱいである。離脱の方向が明らかになるにつれ、市場関係者の事前の予想通り、あるいはそれを大きく上回って各地で株価は急落し、為替は乱高下するなど24日の金融市場はのたうちまわった。その衝撃を、結果判明のタイミングで最初に日本市場が直撃され、時間の経過とともに影響は欧州、米国へと広がった。英国は全世界に大迷惑をかけているのである。

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