WEDGE REPORT

2016年7月12日

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 米テキサス州ダラスで起きた警官銃撃事件で、警察がロボットを投入して容疑者を爆殺したことに対し、米国内で論議が沸き起こっている。オバマ大統領は12日にダラスの追悼集会で演説する予定だが、白人警官による黒人射殺事件で分断が深まる米社会は警察の「軍事化」という新たな問題に直面している。

ペンタゴン(iStock)

ドローン使用と同じだ

 事件の発端は2件の白人警官による黒人射殺だった。7月5、6の両日、南部ルイジアナ州バトンルージュと中西部ミネソタ州ファルコンハイツで黒人が相次いで射殺された。いずれもそのもようなどが動画サイトに公開され、警察への強い反発を呼んだ。

 これらの事件を受け、「黒人の命は大切だ」運動などの抗議行動が各地で起こり、ダラスでのデモの際、警官銃撃事件が発生、5人が死亡した。黒人の元陸軍予備役兵マイカ・ジョンソン容疑者(25)の犯行。ジョンソン容疑者はアフガニスタンでの従軍経験があり、白人を殺したいと憎悪していたと伝えられている。

 ジョンソン容疑者は警官銃撃の後、銃を乱射しながら近くの駐車場に立てこもり、ここでも警官隊との銃撃戦を展開した。ダラス市警は容疑者に投降を呼び掛けたが、一顧だにされず、“ロボット爆弾”による爆殺となったようだ。

 使われたのは、遠隔操作の爆弾処理ロボット。米防衛機器大手ノースロップ・グラマンの子会社が開発した機材で、通常は危険な犯罪現場を調べたり、不審な爆発物を爆発ないしは解体処理するために捕捉するのに使われるもの。今回はこの機材のアームに爆発物を取り付け、ジョンソン容疑者の近くまで密かに接近させて爆殺した。

 市警がなぜスナイパー(狙撃手)を使わなかったのか、また容疑者が駐車場から出てくるまで待てなかったのかなど“ロボット爆弾”使用には多くの疑問が残されている。これに対し、市警のブラウン本部長は「他のやり方では警官を深刻なリスクにさらすことになっただろう」と正当化している。

 “ロボット爆弾”が犯罪の容疑者殺害に使用されたのは今回が米史上初めてで、その背景には同僚を殺された憎悪もあったのではないかとの見方も出ている。しかし、ダラス市警のロボット使用の決断に対しては賛否両論がある。

 批判的な意見としては、「過剰な武力行使ではないか」「警察と軍の境界をあいまいにするもの。軍が戦地でドローン(無人機)を使っていることと同じだが、警察の任務は軍とは異なるものだ」「警察の軍事化を示すもの。全米の警察にロボット使用が広がるだろう」など警察の在り方に不安と懸念を示すものが多い。

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