WEDGE REPORT

2016年7月28日

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ウナギの取材を始めると、違法行為や業界のコンプライアンス意識の低さなどが次から次へと明らかになる。ニホンウナギは絶滅危惧種にも指定されており、もはや「今年も土用の丑の日がやってきました」などとお祭り騒ぎをしている状況ではない──。

 「絶対に名は出さないでくれ」

 台湾のシラスウナギ(ウナギの稚魚、以下シラス)輸出業者は我々取材班にそう告げた。なぜ名を出すことを頑(かたく)なに拒むのか──。それは彼に「罪」の自覚があるからである。

 日本人の好物であるウナギを巡って、台湾、香港、日本を舞台に壮大な「不正」が行われている。今回、取材班はその舞台である台湾、香港へと飛び、関係者らを取材した。

 取材のアポイントメントを入れるのにはかなり骨が折れた。当たり前だが話すメリットなどなく、誰も話したがらないからだ。だが、様々なコネクションを使って、交渉を続けた結果、匿名を条件に複数の人物が取材を受けてくれた。

2011年12月、台湾の桃園国際空港で香港行きの航空機に搭乗予定の乗客のスーツケースから押収された2万匹のシラス(写真・TAIWAN FISHERIES AGENCY)
2013年12月、台湾の宜蘭の沖合約13キロの地点で、海岸巡防署が漁船内から検挙したシラス24万匹余り(写真・TAIWAN FISHERIES AGENCY)

 台湾は2007年にシラスの輸出を禁止した。正確に言えば、台湾でシラスが採れる10月下旬~3月末とほぼ重なる11月~3月における輸出の禁止である。冒頭登場した台湾の業者は、シラスの密輸出に携わる人物である。

 「もちろん台湾でシラスの輸出が禁止されているのは知っている。だから色んな〝抜け道〟がある香港へまず運び、その後日本へ運ぶんだよ」

 台北市内のとあるホテルの一室で、台湾の輸出業者は身振り手振りを交えながら話をした。

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