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2016年9月13日

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木村正人 (きむら・まさと)

ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任。2012年独立。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)

 6月に行われた国民投票で英国民が「EU離脱」を選択した一件は、日本でも大きく報じられた。だが、これはEU内でくすぶる火種の一つに過ぎない──。

 英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択したことで、欧州の亀裂がさらに広がり始め、〝離脱・独立ドミノ〟が懸念されている。

 マリーヌ・ル・ペン氏が率いる極右政党「FN(国民戦線)」が勢力を伸ばし、来年大統領選挙が行われるフランス、自由党のウィルダース党首が国民投票を呼び掛けるオランダ、「極右」大統領が誕生しそうなオーストリアなどがEU離脱を目論(もくろ)み、英国ではスコットランドが、スペインではカタルーニャが虎視耽々(こしたんたん)と独立を狙っている。

 なかでも次なる爆弾と目されるのは、イタリアだ。ローマとトリノの市長選で、元コメディアン率いる新興政党「五つ星運動」の女性候補が予想を上回る大勝を収めた。「五つ星運動」は単一通貨ユーロの是非を問う国民投票を主張しており、ローマ市長の行政手腕が認められれば国民投票の実施に向け弾みがつく。

 議会改革を目指す今秋の憲法改正国民投票が否決されればレンツィ伊首相は辞任、次の総選挙で「五つ星運動」が議会第1党に躍り出る可能性がある。しかし彼らの政策、政治手腕はまったくの未知数なのだ。一方、スペインのカタルーニャ自治州では独立運動が燃え上がる。この勢いを止めるのはもはや難しいだろう。ローマとバルセロナから報告する。

6月の統一地方選でローマ初の女性市長に選ばれたビルジニア・ラッジ氏
(写真・EPA=JIJI)

立ち居振る舞い、表情、仕草
すべてが絵になるローマ市長

 「私たちがローマ市議会の野党だった時、歴史ある市庁舎の門は市民に対しずっと閉ざされていた。これからは8月を除き毎月最後の日曜日に皆さんに開放します」。6月の統一地方選でローマ初の女性市長に選ばれたビルジニア・ラッジ氏(38)は7月31日、ローマ市本部庁舎になっているカンピドリオ広場のセナトリオ宮に市民を招き入れ、こう宣言した。セナトリオ宮には紀元前に遡るローマ帝国の遺跡が取り込まれている。政財官の権力と癒着の象徴、セナトリオ宮が暴力革命ではなくラッジ市長によって開放された。

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