中島厚志が読み解く「激動の経済」

2010年2月12日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 前回では、政府の「新成長戦略(基本方針)」について見てみた。「新成長戦略」に注文、課題はあるものの、成長力に乏しい日本経済に成長戦略が不可欠という点では異論はない。実は、日本には成長戦略の芽となる有望なフロンティアは数多くある。そこで、今回は日本経済のどこに成長フロンティアがあるのかについて考えてみたい。

日本経済の先行きは厳しい

 有効な成長戦略を論じるには、まず日本経済が置かれた現状を再認識することが大事である。日本の平均賃金や名目GDPは約20年前の水準にまで戻ってしまい、個人消費はエコカー減税などの政策によってかろうじて支えられている。経済には大きな需要不足があり、デフレも持続する公算だ。内需が弱ければ経済成長は輸出主導にならざるを得ないが、中国やアジアの経済成長が堅調な一方、いままで経常赤字拡大で世界経済を牽引してきた米国経済が再び同じような成長パターンに戻るとは当面考えにくい。

 企業も厳しい状況にある。かつての不動産バブルの処理は終わったものの、金融危機で需要が急減して再度「3つの過剰」(過剰な設備、雇用、債務)を抱えてしまった。韓国や中国などの企業の台頭も著しく、国内外での競争は激化の一途である。しかも、アジア諸国などの成長力のある新興国市場を取り込もうにも、平均的な所得水準は低く、価格が高くてはなかなか売れない。

 日本の今後も厳しい。少子高齢化と人口減少は着実に進行しており、あと10年もすると、国民の負担水準をかなり引き上げない限り現状の社会保障水準を維持することすら難しくなる。一方で、日本の財政赤字は国際的にも記録的水準に達しており、財政赤字の拡大で社会保障負担増を賄うことも限界に近づきつつある。

厳しい経済課題自体が成長フロンティア

 ざっと見れば、日本経済の置かれた状況はこのようなものだろう。いずれも大変厳しく新産業の育成など新しい分野で経済成長を図ることはあるものの、それ以外ではどこに有望な成長フロンティアがあるのかと思われる人も多いだろう。しかし、これらの厳しい状況こそがいずれも大きな成長フロンティアなのである。

 まず、平均賃金が大きく下がり、名目GDPとともに20年前の水準となっていることは、国民と企業が稼げなくなっていることを示している。だとすれば、もっと国民と企業が稼げる環境を整備することが大きな成長戦略となる。しかも、余地はある。企業で言えば、国際的に高い法人税の引き下げやとりわけサービス業分野での一層の規制緩和など、企業活性化の余地は依然として大きい。

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