オトナの教養 週末の一冊

2016年9月8日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 リオ五輪では、ウサイン・ボルト選手をはじめとするアフリカ系選手の活躍が目立ったが、日本人選手も負けてはいなかった。とりわけ、抜群のチーム力で銀メダルを勝ち取った男子400メートルリレーは痛快だった。その興奮のさなか、手にしたのが本書である。

『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?──アスリートの科学』(デイヴィッド エプスタイン 著,福典之 監修,川又政治 翻訳、早川書房)

 中継映像を見ていると、選手の背負った国旗がどこのものであろうと、陸上種目の上位は必ずといっていいほどアフリカ系の選手が占めている。近い将来、五輪をはじめ、スポーツ・パフォーマンスを競う世界大会は、アフリカ系選手ばかりになるのでは・・・・・・。

 そんな想像を膨らませつつ、競泳や体操、柔道、レスリングなどで日本選手が上位に入ると、種目によっては、ある種の体型が有利になるのかもしれない、と考えもした。

 本書は、「生物的資質とハードトレーニングが、相互にどのようにして運動能力に影響を与えるか」、要するに、運動能力は「遺伝か環境か」「氏か育ちか」というテーマに斬りこむノンフィクションである。

二つのまなざしでとらえた
スポーツ科学の最先端

 実のところ、運動能力は「遺伝か環境か」ではなく、「遺伝も環境も」であることは、広く信じられている。

 しかし、「遺伝と環境は、具体的にどのように相互作用しているのか? 成績に対するそれぞれの貢献度合いはどれほどか?」という突っ込んだ質問への答えは、まだない。

 ヒトゲノムの塩基配列が解読されて以降、「最先端の遺伝子研究の時代へと突入している」というスポーツ科学の現状を、トップ・アスリートたちの悲喜こもごもの物語をまじえつつ、著者なりの視点で検証を試みたのが本書である。

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