海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年10月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「第3回テレビ討論会とトランプのパーソナリティ」です。第3回テレビ討論会は10月19日(現地時間)西部ネバダ州ラスベガスにあるネバダ大学で開催されました。結論から述べますと、3回目も民主党ヒラリー・クリントン候補は失言がなく無難に乗り切りました。

 一方、共和党ドナルド・トランプ候補は最後の討論会で選挙戦の劣勢を跳ね返せなかったのです。討論会が終了すると、クリントン候補は笑顔を浮かべて司会者と握手を交わし、会場にいる有権者に手を振っていました。それとは対照的にトランプ候補は、不満足そうな表情でメモ用紙を引き裂いていたのです。2人のこの表情が討論会のパフォーマンスの出来を物語っていました。

 本稿では、第3回テレビ討論会において筆者が注目したクリントン・トランプ両候補の発言の意図を分析します。そのうえで、討論会からみえたトランプ候補のパーソナリティを心理学的及び異文化的視点から説明します。

トランプ候補の支持者(GettyImages)

ダメージの最小化を狙うクリントン

 クリントン候補が第1回及び2回テレビ討論会において語らず、第3回で断定的に言ったことがあります。それは、ロシア政府による同陣営の内部文書に対するハッキングです。同陣営にはロシア政府が内部文書をハッキングし、「ウィキリークス」に提供しているという懸念があるからです。第3回討論会で、同候補はプーチン大統領の命令で実施していると述べたうえで、トランプ候補は同大統領を非難するべきだと主張したのです。では、その意図はどこにあるのでしょうか。

 確かにクリントン候補は、各種世論調査で支持率並びに選挙人の数の双方でトランプ候補を上回っているのですが、今回の大統領選挙では次々にオクトーバーサプライズ(投開票日1カ月前に起きる選挙結果に大きな影響を与える驚くべき出来事)が次々に起こり予断を許しません。10月に入るとトランプ候補に関しては、連邦所得税不払い、わいせつ発言及び女性スキャンダルが発覚しました。

 一方、クリントン候補に対してはウィキリークスによる非公開演説の内容が明らかになったのです。クリントン陣営はロシア政府が、同候補が削除した3万3000通のメールをハッキングし、ウィキリークスがそれをネット上に載せるというシナリオを懸念しています。これが最も選挙結果に影響力を及ぼすオクトーバーサプライズになる可能性があるからです。

 そこで、最終回となった第3回テレビ討論会において、同候補は米国の17の省庁によると、ロシア政府が米大統領選挙への介入を目的でハッキングを行ったというメッセージを有権者に送り、暴露された場合に備えてこの段階でダメージを最小化する戦略をとったのです。言い換えれば、暴露されたときのために伏線を張ったという点で意味があった訳です。

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