海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「大統領候補テレビ討論会の見所(2)」です。「テレビ討論会の見所(1)」では、民主党のヒラリー・クリントン候補の健康問題と絡めて非言語コミュニケーションの重要性を指摘しました。

 本稿では、まずテレビ討論会における共和党のドナルド・トランプ候補に対する有効な戦略を紹介します。次に、討論会でどのようにしてクリントン候補がオバマ大統領の出生地に関するトランプ候補の撤回発言を活用できるのかについて説明します。さらに、感情のコントロールと移入についても述べ、そのうえで討論会のポイントをまとめてみます。

ワシントンD.C.のドナルド・レーガン国際空港でニアミスしたクリントン専用機(手前)と、トランプ専用機(奥)、(GettyImages)

ブレンド戦略

 これまで研究の一環として10州のクリントン陣営に入り、戸別訪問、電話による支持要請及び有権者登録を行ってきました、戸別訪問は昨年の8月から積み重ね、合計で2971軒になりました。その中でトランプ支持者はもちろんですが、同候補に傾いている無党派層の中に、ある傾向が存在することが明らかになったのです。彼らは、トランプ候補を「本物」とみなし、情熱的な姿に魅力を感じているのです。その一方で、クリントン候補の内政並びに外交・安全保障政策に関する知識にはそれほど価値を置いていないのです。

 テレビ討論会で政策論争となった場合、クリントン候補の豊かな知識がトランプ候補を圧倒するという見方が確かにあるのですが、筆者は必ずしもそれがクリントン候補に優位に働くとはみていません。トランプ候補は、これまでメール及びクリントン財団の問題を最大限に活用し、クリントン候補を不正直で偽物であるというレッテルづけに一定の効果を上げてきました。討論会で不利な立場に立たされると、トランプ候補は「自分は世界の大統領になるのではない。米国の大統領になるのだ」と主張し、外国政府から献金を受けたクリントン財団を批判し反撃するでしょう。それに加えて、クリントン候補の削除された約3万3000通のメールにも触れ、攻撃を畳み掛けてくるでしょう。討論会でトランプ候補は、知識よりも正直や信頼に価値を置く無党派層に訴えるのです。

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