海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 現地リポートの4回目は、「トランプのリセットボタン」です。支持率で前国務長官ヒラリー・クリントン候補を追う不動産王ドナルド・トランプ候補は、投票日まで残り11週間となったところで、陣営を刷新しました。同候補は、保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長のスティーブン・バノン氏を選対本部の最高責任者に、世論調査の専門家であるケリアン・コンウェイ氏を選対本部長に起用しました。コンウェイ氏は共和党候補指名争いで、トランプ候補のライバルであった保守派のデッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)を支持しています。

 本稿では、陣営刷新後のトランプ候補の変化とその背景について分析します。そのうえで、トランプ陣営が直面している不利な状況をリセットできるのかについて考えてみます。

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新しいトランプの演出

 新チーム結成後、トランプ候補は硬と軟とを織り交ぜたメッセージを発信しています。その狙いは一言で言えば、支持層の拡大にあります。同候補は、共和党候補指名争いで同党の歴史上最高の約1400万票を得て指名を勝ち取りましたが、本選では支持層の拡大が必須です。2012年米大統領選挙で、オバマ大統領は約6600万票を獲得して再選しています。投票日まで残り80日を切った段階になって、同候補は白人労働者票のみでは本選で勝利できないことをやっと受容し、選挙戦略の軌道修正を行っています。

 まず、トランプ候補は、南部ノースカロライナ州での集会でこれまでの失言について「誰かを傷つけてしまったかもしれない」と後悔を表明しました。トランプ支持者の核となっている熱狂的な強硬派に加えて、穏健派の票を狙ったメッセージです。

 南部バージニア州フェアファックス市在住でクリントン陣営が標的としている共和党支持者ホゼ・モンテメヨールさん(46)の家を訪問すると、次のように語っていました。

 「私は、共和党候補指名争いでルビオ(上院議員)を支持しました。本選ではどの候補に投票するのか決めかねています。トランプは危険な人物ではありません。私はトランプが陣営を刷新した点を評価しています。新しいチームが必要です。トランプが集会で自分の過激な発言について謝罪したことにも私は満足しています」

 トランプ候補の失言に対する後悔の表明は、穏健派のモンテメヨールさんに好意的に受け入れられていました。

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