チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月11日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 現在北京では、年に一度の全人代(全国人民代表大会)開催中だが、共産党指導部の描くシナリオに沿って縷々進行される、儀式たる「国会」はあえて無視し、今回はまったく別次元のテーマを取り上げたい。

 長らく旅行雑誌の編集者として仕事をした身としては、一度は取り上げたかったテーマ――それは、昨今日本のメディアが「停滞する日本経済の救世主」とまで喧伝する、訪日中国人観光客についてである。

 昨年10月末には中国人の個人旅行も解禁された。たしかに今や、銀座あたりのショッピング街で、地方の観光地で、新幹線の中でも少人数で行動する中国人観光客を目にすることは珍しくなくなった。まずは、そんな彼らの「救世主ぶり」を伝える際、日本のメディアが好んで引っ張ってくる「数字」を列挙しながらこの問題を考えてみたい。

どれほどの人が来日しているのか?

 2008年、日本を訪問した外国人の総数は800万人超。そのうち中国人が100万人超という。12%強のシェアと聞けばそれなりのインパクトがある。ただ余談だが、隣国ということでは、同年日本を訪問した韓国人の総数は200万人超、シェア25%、韓国の人口が4000万ほどということを考え合わせるとこちらのインパクトはさらに大きい。

 日本政府は10年(政府資料は平成22年と表記)つまり今年には、外国人観光客1000万人達成を目指した「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を展開してきた。

 観光業界用語では、自国から外国へ出ていく旅行者を扱う事業を「アウトバウンド」と呼び、反対に自国に入ってくる旅行者を扱う事業を「インバウンド」と呼ぶが、観光庁の担当者によると、この「アウト」と「イン」の格差を小さくしていくことで「外貨獲得を目指す」ことが目標の根本なのだという。ちなみに08年、外国に出て行った日本人の総数は1700万人強。対して「イン」は過去10年で倍増近い伸びを見せ、800万人に増えたとはいってもまだまだ「アウト」の半分にも至らない。

 インを近い将来2000万人にまで伸ばし、一方でアウトをその半分までに、というのが「10年1000万」という目標で、その延長線上には10年後の20年に訪日外国人を現在の倍以上の2000万人にまで増やすとの目標を掲げている。このあたりでは、インとアウトの格差が限りなくゼロに近づいていくのではないか、という目算らしい。

 驚くのは、この2000万人のうち、実に600万人を中国人観光客で賄おうという目算を立てていることだ。あえて繰り返し書くが、現在100万人の訪日中国人を10年後に6倍に増やす計画なのだ。この「壮大な」計画、是と捉えるか否かはけっして単純な問題ではない。

日本政府が「中国人頼み」に陥るワケ

 どうして日本政府の目標がこれほどまでに「中国人頼み」か、については即座に3つほどの背景が思い浮かぶ。

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