2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月11日

 取るに足らないようなものでも大切にされ、人目につかないところにも人の手が行き届き、日本人はいつでもどこでも親切で行儀がいい。彼らはこうしたことを評価する。

 「中国人は人目につくところにはお金をかけるが、見えないところは構わない。あるいは、中国ではお金があれば、ルールなんか無視できる。でも、日本では金持ちも貧乏人も、有力者も普通の人も皆平等なのだと実感できるね」

 若くて感受性の鋭い中国人ほどこうした感想を漏らす。中国のインターネット上でも、若くして日本を旅行する機会に恵まれたブロガーたちが、「実際に見た日本の素晴らしさ」や「日本に学ぶべきことは技術だけではなく、ソフト面にこそ多くある」というような意見を熱っぽく書き込んでいるのも、もはや珍しくはない。

 またもや断りをいれるが、私は、日本は万事素晴らしく、それを中国人に教えてやるのだ、などという「上から目線」で物言うつもりは毛頭ない。しかし、ややもすると日本人が過小評価している日本の民間のソフトパワーが中国人旅行者に少なからずよき影響を与えてもいることも確かだ。ヨーロッパあたりでは「マナーが悪い」といわれているという中国人観光客だが、今、日本に来ている人々は案外マナーにも気を使っている。

 日本の日常風景を見、体験することは、政府主導で政治臭たっぷりの「日中友好」行事などより何倍もポジティブな力があるようだ。

観光振興が日本の安全保障になる?

 「日本の本当の姿、よさを知ってもらえば、反日教育された中国人も、よもや将来日本と一戦交えようなどとは思わないでしょう。観光振興は究極の安全保障かもしれませんね」

 知人とこんな話をしたこともある。一理あるという人も少なくない。そして、今のところ日本に来ている中国人観光客個々人には特段、大きな問題は見受けられない。

 しかし、である。現実はそうも甘くはない。

 政府が旗振りをする以前から、日本の旅行業者は「近い将来、中国人観光客が増える」との見通しをもって「インバウンド事業」の体制構築などに努めてきた。しかし、現在、日本の大手旅行業者で「中国人客で儲けた」という会社は皆無だ。

 「まず、旅行代金が信じられないくらい安いのです。日本人の数十年前の海外旅行とはワケが違いますよ」

 送り出し側(中国の旅行会社)の商売のやり方の問題もあるが、中国人は金持ちといえども支出にシビアだ。そこそこの金持ちでも、乗り物や宿といった基本的なものにはできるだけ金を払いたくないというのが本音なのだ。「いやいや、中国人の金持ちは高級旅館に泊まったり、数十人乗りのバスを5~6人でチャーターしたりしている」などとの反論もあるが、と旅行業のプロに聞くと、「それはごく一部の話」だと苦笑する。


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