中東を読み解く

2016年11月4日

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 過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者アブバクル・バグダディが2日、音声メッセージを公表、「神の敵に対するジハード(聖戦)を弱めるな」とイラク軍のモスル奪還作戦への徹底抗戦を呼び掛けた。バグダディ自身の声明は約1年ぶりで、ISが追い詰められていることが一段と浮き彫りとなった。

Vサインをするイラク軍兵士(GettyImages)

”トルコ侵攻を”と檄

 バグダディは昨年12月26日、支持者や戦闘員に対し「ロシアと米主導の有志連合の空爆はISを弱体化させるのに失敗した」との音声メッセージを出して以降、沈黙を続けていた。このため、バグダディが米空爆による負傷が原因ですでに死亡しているとの観測も出ていたほどだ。

 バグダディは今回のメッセージで「この戦争はお前たちのものだ。名誉にかけて自分たちの土地を守る価値は恥辱の中で撤退するよりも何千倍も尊い」と強調。「川のように不信心者の血を流せ」と戦闘員を鼓舞した。

 さらにトルコ軍に対して「怒りの炎を解き放て」として、戦闘員らにトルコへの侵攻を要求、トルコの安全を恐怖に変えるよう呼び掛けた。また不信心者の国々に加担するサウジアラビアのサウド王家や軍、政府などの標的を攻撃するよう求めてもいる。

 バグダディがほぼ1年の沈黙を破って音声メッセージを公表したのは、ISがモスル攻防戦で劣勢になり、前線から逃亡する戦闘員も相次いでいることから、あらためて組織の引き締めを図るためという意味もある。トルコやサウジへの攻撃を起こすよう要求したのも、モスル攻撃の矛先を鈍らせるための陽動テロを呼び掛けたものと見られている。

 モスル奪還作戦は、クルド人武装組織ペシュメルガが北部から、イラク軍の対テロ特殊部隊とペシュメルガが東部から、第9機甲化師団などイラク正規軍が南部から、そして西部からはイラン支援のシーア派民兵「人民防衛隊」がそれぞれ迫っている。

 その中で対テロ特殊部隊が1日、市の東端、コクジャリ地区に突入。国営テレビ局を確保し、奪還作戦は新局面に入っている。IS側はこれまでのモスル周辺の戦闘などで戦闘員ら約1000人が殺害されたもようだが、わな爆弾を張り巡らし、自爆車攻撃、トンネルを使ったゲリラ攻撃などで激しく抵抗を続けている。しかも市中心部にいたる道路には戦車や車両を阻止するため分厚いコンクリート壁が築かれており、イラク軍側の進撃を妨げている。

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