世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月7日

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 11月4日付ワシントン・ポスト紙の社説は、フィリピン大統領やマレーシア首相による対中接近について、人権蹂躙などに対する米国の批判があるが、米国は民主主義の原則は維持すべきであると述べています。要旨は次の通りです。

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 米国のアジア戦略は、オバマ政権の終盤で完敗になりそうだ。フィリピンのドゥテルテ大統領が訪中し、米国と決別すると述べた。その後、マレーシア首相が訪中し、両国関係を強化すると約束した。中国は、何百億ドルの借款や投資を約束し、戦略的に進出している。フィリピンは、南シナ海の領有権に関する二国間協議を受け入れ、マレーシアは初めての主要武器購入案件として中国から警備艇を買うことにした。

 オバマは、アジア戦略を重要視してきたが、今や同盟関係の弱体化と中国の影響力の拡大が残る結果となってしまいそうだ。それには三つの理由がある。

 先ず、中国の強圧的な行動を一層強く押し返すことに失敗している。次に、オバマは対アジア政策のTPPに対する支持拡大に失敗している。第三の理由は「価値の乖離」に関係する。しかしこれについては米国は政策の変更をすべきではない。

 ドゥテルテは以前から反米傾向を持っていたが、同人の麻薬戦争に対する超法規的殺害等への米国の反対が、唐突な中国接近に駆り立てた。政府投資基金の10億ドルを不正に米国に送金したと疑われているマレーシアのナジブ首相は米司法省による捜査開始を怒っている。

 習近平政権は人権蹂躙などの問題は喜んで無視、場合によってはそれを扇動することさえする。中国は問題となったマレーシアの投資基金を支えるために支援まで行った。不正取引や人権蹂躙などでこれらの国の対米関係が悪化することを見込んで関係する指導者を支援し中国の影響力を拡大しようしている。しかしそのような戦略はうまくいくとは限らない。ドゥテルテの訪中については国内で反動が起きているし、ナジブについても国内に強い反対がある。影響力拡大競争は貿易や軍事力だけで決まるものではない。米国は民主主義の原則を守っていくべきである。
出 典:Washington Post ‘U.S. allies are buddying up with the authoritarians in Beijing’ (November 4, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/us-allies-are-buddying-up-with-the-authoritarians-in-beijing/2016/11/04/f88a39aa-a128-11e6-8832-23a007c77bb4_story.html

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