2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月31日

 もっとも、事が不良品というレベルで済めばまだ良いのかもしれない。先日、日本全国を震撼させた餃子事件の犯人逮捕が報じられたが(タイミング的には、グーグル問題などで米中関係に風波が立つ中、上海万博を控えて少なくとも日本人の対中イメージを悪化させないでおこうという狙いがあるのだろう)、犯人は河北省の寒村出身の努力家でありながら、待遇面で極めて強い不満を抱いての犯行であったという。このような、農村出自であるがゆえに正当に報われない農民労働者が中国全土にひしめいていることを考えれば、今後類似の事件がいつ繰り返されてもおかしくないし、彼らの不満の表明が突如過激なかたちをとって増加することも予想される。

中国リスクの本質とは一体何か

 今や、本当の中国リスクとは、必ずしも中国政府の対外的な強圧さや過激なナショナリズムではないのかもしれない。むしろそれは、中華人民共和国という「国体」に切り離しがたく埋め込まれた時限爆弾としての「三農問題」、そしてその背後にある事実上の国家農奴制の問題、さらには全ての中国国民の自由と創意を妨げる党・国家体制そのものであるということが見えてくる。改革開放30年のあいだの外界との接触が中国社会を大きく変えたように、この問題に風穴を開けるのも(少なくとも中国共産党・政府の施策が最悪の方向をたどらないようにするのも)外界の強い注目による他はないのである。

 

※次回の更新は、4月7日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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