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2016年12月21日

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小笠原欣幸 (おがさわら・よしゆき)

東京外国語大学准教授

1981年一橋大学社会学部卒。同大学で修士号、博士号取得。94年東京外国語大学外国語学部助教授、2007年より現職。英国シェフィールド大、台湾国立政治大で客員研究員を務める。馬英九総統、呉敦義副総統をはじめ台湾の与野党政治家、学者・ブレーンの多くと面会。

 台湾で新政権が発足し7カ月になる。安倍政権と蔡英文政権は日台連携の思惑が一致しているので日台関係拡大の期待が語られたが,実は大きな進展は見せていない。

 現在日台間の最大の問題は,台湾側の日本食品輸入規制である。福島原発事故後各国が日本食品輸入規制を導入したが,最近は規制を緩和・撤廃する方向にある。しかし台湾は福島,栃木,群馬,茨城,千葉の5県の食品(生鮮,加工共)の輸入禁止を続け,昨年逆に規制を強化した。馬英九政権が規制解除に動かなかったため,日本側の期待は蔡政権に向けられた。

 11月に蔡政権が福島以外の四県の食品について規制を緩和する方針を示したが,激しい抗議行動が巻き起こり,押し込まれた蔡政権は解決を先送りにした。日本側関係者の失望は非常に大きい。日本側には東日本大震災で破格の支援をしてくれた台湾への感謝の気持ちが広く存在している。それがために被災地の風評被害を広げるような台湾側の対応に困惑させられている。

(画像はイメージです:iStock)

食の安全に神経質

 この問題は双方の議論がまったくかみ合わない。本来の争点は,日本からの輸入食品中に基準値を超える放射性物質が含まれているかどうかであるはずだ。台湾の衛生当局の検査では日本の輸入食品から放射性物質は検出されていないのだがその事実はほとんど注目されず,輸入食品の中に5県の産品が含まれているかどうかばかりが注目され,見つかるとスーパーの棚から同種食品を撤去する騒ぎを繰り返している。日本から見ると台湾の議論は感情的で方向がずれていると映る。

 台湾では食の安全について人々の警戒感が極端に強い。台湾メディアは5県の食品を「核災食品」と報道し,市民団体も人々の不安を煽り,野党国民党は政治的目的で抗議活動を展開したので,「日本食品は放射能に汚染されている」という誤解やデマが独り歩きしているのが実情である。

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