2024年4月20日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2017年1月2日

アメリカは元々「弱肉強食」国家である

 昔の話だが、アメリカのビジネスマンに「売り手良し、買い手良し、世間良し、三方すべて良し」との日本の格言を教えてあげたら、返ってきた答えは「アホか?」といわれた。彼の考えは「弱肉強食しかない」というものだった。アメリカのオバマ時代は行動よりも理想論が先行した。トランプの時代は理屈ではなく行動が優先するのだ。

 トランプ氏は「偉大なアメリカを再び」そして「強いアメリカを取り戻す」と訴える一方で、オバマ路線を引き継ぐかたちでアメリカは「世界の警察ではない」とも語っている。世界の盟主たるアメリカが自国第一主義をとることで、今後は覇権国なき世界になると占う。トランプ氏の言う「強いアメリカを取り戻す」というのは、経済、外交、軍事、すべてにおいて強気な姿勢を崩さないということだ。そんな「弱肉強食」の時代がやってきたのである。

欧州は✖で、日本は△

 さて今年の欧州はどうなるのだろうか? 答えは「✖」である。欧州はEUの良さが発揮できない環境になってきた。英国のEU離脱が最たるものである。英国の民衆も排他主義を選択したのだ。イスラム諸国から難民が押し寄せてくる。しかもテロが頻発するから、EU域内は気が気ではない。難民とテロリストの見分けはつかないから不安が高まっている。去年はベルギーやフランスそしてドイツをそれぞれ3回訪問したが、毎回その前後に自爆テロが起きた。難民の中にISやアルカイダが紛れているので今やイスラム系の人々を受け入れることができないまでに反発を招いている。

 経済面ではドイツの独り勝ちである。経済格差の広がったギリシャはもちろんスペインやイタリア、ポルトガルなどの経済は破綻状態に近づいている。今年の春から始まるオランダ、仏、独の選挙でもEU離脱傾向に拍車がかかる。EUまたはユーロ圏の崩壊というシナリオが現実的になってくると占う。そうなると難民の受け入れは困難となり、経済は益々不振となってくる。

 一方、日本はアメリカが良くなれば多少のおこぼれがある。アメリカが保護主義になることは困るが、強いアメリカのドル高円安傾向は日本の輸出産業を潤してくれる。トランプがTPPから脱退するといっていることは、日本にとっては困ったことだが、今年はともかく2018年には見直しが入らないとも限らない。昨年の大納会の日経平均株価はギリギリではあったが、5年連続で前年の水準を上回った。アベノミクスは決して上手く行っているとは思わないが、経済面ではこれ以上は悪くもならない。だから(△)である。

中東情勢は第3次世界大戦の様相

 さて、アメリカは(○)で欧州は(✖)で日本は(△)であるが実はその他の地域の方が問題である。特に世界の火薬庫である中東情勢はどうなるだろうか? 石油価格の動向が金属コモディティーにも直接間接に影響を与えるから中東情勢を読み切る必要がある。中東情勢は今や第3次世界大戦だと言っても過言ではない。

 日本に住んでいたら第3次世界大戦とは言い過ぎだと思うかもしれないが、僕が去年海外出張をしたのは120日だった。トルコに4回、ベルギーに3回、ドイツに3回、ロシアに5回の業務出張をしたが、トルコでは12回の自爆テロ事件(クーデター未遂を含む)が起こった。シリアでは15回、ベルギー、ドイツ、フランス、ロシアでも数回のテロ事件の現場を見てきた。

 出張期間の前後に実際にテロやクーデターが起こったのである。これだけ頻発していると現地に住んでいる人からするとテロという形態の第3次世界大戦だと認識するのも当然である。

 今やアメリカは石油の世界一の生産国だから、中東がいくら内乱になっても困らなくなった。つまりこれまでアメリカが世界の警察でなければならなかった理由(つまり石油の安定ソース確保)が消えてしまったのだ。一方、プーチン大統領はアメリカがいなくなった勢力範囲に入りこもうとするのは当然である。ウクライナをロシア領にする必要性はセバストポリが必要不可欠だったからだが、僕の見立てではプーチン大統領の方が戦略思考では一枚も二枚も上である。いくら経済制裁を強化しようが欧米に頼らなくても中国や韓国やトルコや中央アジア諸国との貿易関係はかなり強固である。確かに経済制裁はロシア経済を直撃したが、それほど困らなくなってきているようだ。


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