山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2016年11月2日

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 今月も例によって4泊4日の弾丸出張で中国大陸を回った。杭州の希土類会議、上海の鋳造工場の見学、宝鶏のチタン工場の見学商談、西安のレアメタル工場との長期契約面談が目的の駆け足出張であったが今回の「山師の手帳」では直近の中国の経済動向について書いてみたい。

 中国経済は過去20数年にわたる社会資本の蓄積の結果、確かに交通インフラ、産業インフラ、住宅建設、などは表面的には整ったが、僕にしてみると失礼な表現だが、まだまだ促成栽培の「張子の虎」に見えて仕方がない。環境問題は後回しで技術革新や研究開発も基礎研究ができている訳ではない。食の安全、金融システム、社会保障制度などの無形の社会資本の改善点はいくらでも残っている。中国には多くの経済指標が発表されるが、その統計の取り方や地域別の差異を考慮すると7割から8割程度の信用度であると云えば失礼だろうか。

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李克強指数って何のこと?

 李克強首相自らが中国のGDP指数は信頼できないといっているが、中国の経済指標の中で「鉄道貨物輸送量」「銀行融資残高」「電力消費」をそれぞれ25%、35%、40%の比率でその推移を見て経済の動向を判断しているというのだ。つまり、恣意性なく経済動向を読みとるためには「鉄道貨物輸送量」「銀行融資残高」「電力消費」の推移はごまかしようがないということなのかもしれない。この指標によると、2013年初めから中国の経済成長の減速は明らかである。中国国家統計局(CEIC)の資料によると、中国の実質成長率は前年比で2013年度は7.6%~7.9%、2014年度は7.1%~7.5%、2015年度は7%が6.7%まで下落、2016年度は6.7%を維持するのが精いっぱいである。つまり中国の経済成長の伸び率は4年連続で減速しているのは間違いない。

最近の交通事情で景況を計る

 「鉄道貨物輸送量」の代わりといっては何だが、今回は中国の交通について「定点観測」をしてみた。ともかく、中国ではどこに行っても一日中、飛行機も新幹線も一般列車も深夜バスも席が取れないほど混雑しているのはなぜだろうか? 素朴な疑問である。今回の出張では、上海から杭州まで190キロを深夜バスで、杭州から上海経由西安まで1740キロを新幹線で、西安から宝鶏市までは2時間のマイクロバス移動である。都合、3800キロの中国横断の旅である。

 3800キロといえば北海道から鹿児島まで行って更に東京まで戻ってきた距離である。おまけに上海から西安行きの飛行機が飛ばなかったので新幹線に替えたが、待ち時間を合わせて移動時間は14時間もかかり、いささか疲れた。上海空港でも西安空港でも杭州の鉄道駅でも乗客でごった返しており、今回も中国のエネルギーに圧倒された。これだけ多くの人々が中国大陸を縦横無尽に移動するのだから凄い経済効果には違いない。見たところ旅客たちは、商用、家族旅行、故郷に戻る旅客といったところだろう。大きな荷物を運んでいる昔ながらの乗客も少なくはない。上海でも西安でも遠くはウルムチや雲南省まで行く列車が休みなく発着している。斬新かつ近代的な駅において、荷物を担いだ帰省客で混雑していることには違和感がある。

 さて、今回は新幹線の普通席切符が直前で取れず、特等席に乗ったが、まさに中国の格差社会を目の当たりに見た気がした。新幹線の特等席は5席しかなく、1等席も約30席、その他の2等席が700〜800席くらいはあっただろうか。そして大多数の人々は新幹線ではなく一般列車で20時間をかけて上海から西安まで行くのだ。この比率は共産党員と大都市の富裕層と一般庶民と農民の比率ではないかと、初めて乗った特等席に揺られながら考えた。中国社会は、今やあらゆるところでクラス分けがなされているのだ。

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