米情報機関はオバマを援護するも、選挙への影響は否定
他方、米国の情報機関はオバマの主張を援護している。年明けの1月6日に、クラッパー米国家情報長官は報告書を公開し、プーチン大統領は米国の民主的なプロセスに対する有権者の信頼を損ない、クリントン候補を中傷して大統領になる可能性を損ね、トランプ氏の当選に有利にことが運ぶことを目的として、米大統領選に影響を与える作戦を命じていたと結論づけたのだ。そして、この分析に対し、米国の中央情報局(CIA)および連邦捜査局(FBI)が高い確信をもって、また国家安全保障局(NSA)は適度な確信をもって同意しており、米国の三情報機関が全てロシアの介入に同意したことになる。
その一方で、同報告書は、その根拠となる証拠を明示しておらず、またロシアの介入は単にサイバー攻撃にとどまらず、国営メディアなども動員したクリントンを中傷する多面的なプロパガンダを駆使し、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)がサイバー攻撃で入手した情報を、内部告発サイト「ウィキリークス」に渡して世界に拡散させたとしながらも、それがどれくらいの影響を与えたかについても言及を避け、最終的には「ロシアによる攻撃は米国大統領選挙の開票と集計そのものには影響を及ぼしていない」と結論づけている 。つまり、報告書はロシアによって様々な妨害行為がなされたけれども、選挙への影響はなかったと述べているわけである。
また同報告書の公開に先立つ1月5日、米国では、複数のロシア政府高官が、トランプ氏の当選を喜んでいたことを米国による通信傍受が掴んでいたことも報じられた。その通信傍受によって、サイバー攻撃による選挙への干渉を認識していたロシア政府高官の存在も明らかになっていたという。だが、そのことも、ロシアがトランプ政権の誕生を喜んでいたことはわかっても、ロシアが選挙に干渉した証拠にはならないとも見られている。
これらのことはトランプにとっては追い風となった。6日にトランプは、クラッパー国家情報長官とも直接面接し、報告書のみならず機密情報も含む詳しい説明を受けたが、その後も、ロシアとの良好な関係を否定するのは愚か者だとして、ロシアの関与を否定し続けている。
対露強硬派を米国家情報長官に任命
だが、昨年末からのオバマ政権の一連の対露政策は、トランプに大きな宿題を残したと言える。トランプは予てより、ロシアとの関係改善を訴えてきたが、その出鼻をくじかれた形となるからだ。トランプは、就任直後に明確な理由もなく制裁を解除すれば、ロシアによる妨害行為を容認したとして、批判を受けるはずだ。かといって、ロシアとの厳しい関係を維持することはトランプの外交政策の方針に反する。つまり、これら一連の動きは、オバマがトランプに突きつけた踏み絵とも言えそうだ。