2016日12月16日、日本の報道はロシアのプーチン大統領の訪日の話題で持ちきりだったが、同じ日、米国メディアはオバマ大統領が、米国大統領選挙へのサイバー攻撃による介入は、プーチンが指示したものだという見解を表明したことをこぞって報じた。だが、ロシアは根拠がないとしてそのサイバーテロによる介入の事実を否定し続けている。
プーチンの「演出」とトランプの称賛
しかし、オバマ政権の対露姿勢は厳しく、12月29日には、ロシアの情報機関が民主党関係者の電子メールをハッキングして暴露し、選挙に介入したとして、在ワシントン・ロシア大使館とサンフランシスコ領事館の外交官35人を国外追放すると発表し、ニューヨークとメリーランドにあるロシアの保養施設も情報機関の拠点であったとして閉鎖した。
それに対し、ロシアのラブロフ外相は、米国の制裁に相当する報復措置を取ることを提案したが、プーチンはそれを受け入れなかった。プーチン大統領はオバマの姿勢を「無責任外交」と糾弾し、ロシアはそれには付き合わないとした上で、「米外交官のすべての子供たちをクレムリンの新年とクリスマス・ツリーに招待する」と述べるなど、懐の大きさを見せつけた。ただし、ラブロフにあえて報復を提案させ、その提案を断わり、報復はしないという懐の大きい決断を示した流れは、プーチンの「演出」だったという見方が強い。
これに対し、予てからロシアの選挙への介入を否定する見方を表明してきた米国のトランプ次期大統領は、報復をしなかったプーチンを称賛した。次期大統領が現職大統領の決断・行動を事実上否定し、ロシアの大統領を称賛するというのは米国の政治史において極めて異例だと言える。