NHKスペシャル「ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像」(10月20日)は、芸能番組や大河ドラマなどでジャニーズ事務所のタレントを起用してきた、NHKによるジャニー喜多川氏による性加害事件と自らの責任を明らかにしようとする調査報道の白眉である。
メディアは、取材先に対して「説明責任」を追及しながら、自らの誤報や報道姿勢などについてはその責任を十分に果たしているとはいえない。外部の弁護士や学識経験者で構成する第三者委員会を設けて報告書をまとめるのは、欺瞞に過ぎない。その真実をこのドキュメンタリーは、メディアに突きつける。
ちなみに『アカウンタビリティを考える どうして「説明責任」になったのか』(山本清・東京大学名誉教授著、NTT出版)によると、アカウンタビリティはギリシャの民主制のなかで生まれた概念であり、自らの非直を明確に説明できない場合は極めて重い罰を課される。日本語訳の「説明責任」はそれからかけ離れていると、強調している。
「問題」浮上後もNHKはジャニーズの出演を増やす
ジャニー喜多川氏による性加害については、週刊文春が1999年に14週にわたって連載した。副編集長として当時、この連載の責任者だった木俣正剛さんは証言する。
「連載4回か5回目になった時、ジャニーズ事務所内がザワついてきたと漏れ伝わってきたので、事務所側と話し合いの場を持った」
「事務所の関係者は、ジャニー喜多川と(姉の)メリーによって、経営は運営されている。『ジャニーズ事務所の常識が、世間の非常識になってしまうんです』という会話だった」と。
こうしたジャニー喜多川氏による性加害の実態に関する報道について、NHKも知っていた。しかし、NHKはジャニーズ事務所が批判にさらされるなかで、逆に事務所のタレントたちの起用を増やしていった。出演者のほとんどが事務所のタレントで占められていた「ザ・少年倶楽部」を開始し、大河ドラマの主演を2年連続で事務所所属タレントが務めた。