2024年12月2日(月)

安保激変

2016年11月12日

――ドナルド・トランプ氏が勝利を収めたアメリカ大統領選挙の結果を、世界は驚きをもって報道しています。しかし、アメリカ国内、しかも都市部ではなく地方に住んだことのある小谷さんは、トランプ氏の勝利の可能性を排除してなかったとお聞きしました。

小谷:科学的とは言えないかもしれませんが、アメリカ社会を「肌感覚」で理解していると、今回の結果はあり得るだろうと思っていました。トランプ氏のコアな支持者は、国際情勢なんて全く気にしていませんし、アジアで何が起きていても関係ないと思っています。しかし、ISがアメリカ国内でテロを起こしたり、不法移民が自分たちの職を奪ったり治安を悪くすることには怒りを感じます。国際問題でありながら、やはり自分たちにとって身近な問題になっていることについては、関心が強いのです。

――そのような考えの人たちに支持されているトランプ氏が大統領に就任すれば、アメリカはさらに「内向き」になるのでしょうか。

小谷:対外政策に関して内向きになるという言い方は正しいと思います。ただ、アメリカが内向きになったのは今回の「トランプ現象」からというわけではなく、現在のオバマ大統領もそうですし、実はブッシュ前大統領も選挙中や就任当初は同様の考えでした。9.11によってそれが逆方向に振れましたが、21世紀に入ってからのアメリカは内向き志向だったのです。その動きがだんだんと強くなり、今回劇的な形で吸い上げられた、と言えるのではないでしょうか。

トランプ氏勝利に各国反応 (写真:つのだよしお/アフロ)

――自国第一主義を掲げ、移民などには非常に排他的、「暴言王」と称されるほどタブーを口にしてきたトランプ氏ですが、同じく「フィリピンのトランプ」と言われるドゥテルテ大統領をはじめ、欧州の極右政党の台頭、英国のEU離脱など、これまでの常識ではあまり考えられなかったような人物や出来事を、どう捉えればよいのでしょうか。

小谷:反エリート主義や反グローバリゼーション、そういった声はこれまでもありましたが、大衆レベルで留まり、実際の政治への影響力は大きくありませんでした。しかし、最近はトランプ氏にしろ、ドゥテルテ大統領にしろ、Brexitに賛成するイギリス人政治家たちにしろ、これまでのタブーを口にする指導者たちが選挙や国民投票を通じてそうした考えを持った人たちに政治における発言権を与える、という流れが続いているように感じます。


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