「これで普天間問題に劇的な変化が起きてしまうのだろうか。だとすると、喜ぶべきなのかも知れないが、この20年間はいったいなんだったのだろうとも思えてくる」
大方の予想に反する米大統領選挙でのトランプ氏の勝利。その晩に飲んだ沖縄県の幹部はそうぼそりつぶやいた。
20年間の迷走
1996年の日米政府によるSACO合意で、米海兵隊が使用する普天間飛行場の代替施設を沖縄本島の東海岸沖に建設するとして以来、20年にわたって迷走が続いてきた普天間問題。2013年12月に当時の仲井真弘多知事が名護市辺野古沖の埋め立てを承認したことで、安倍政権は埋め立ての工事に着手したものの、仲井真氏に代わって沖縄県知事となった翁長雄志氏は埋め立て承認の取り消しに踏み切り、これを不服とする国が県を提訴するなど、普天間問題は沖縄の過剰な基地負担の象徴として、沖縄県民のみならず私たち日本国民の眼前に広がり続けてきた。
ところが、まさかのトランプ氏当選である。
大統領選のキャンペーンの間、トランプ氏は在日米軍の駐留費や米軍の体制をめぐって物議を醸すような発言を繰り返してきたことはよく知られている。
「日本の防衛は続けたいが、公平な支払いが必要だ。日本は自分自身で防衛しないといけないだろう」
「米国は巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はもうない」
日米安保条約では、日本に米国を防衛する義務はなく、日本は安全保障で「フリーライダー(タダ乗り)」となっている、もっと駐留費の負担を増やすべきだとトランプ氏は主張してきた。日本だけでなく韓国やドイツも引き合いに出しながら、負担増に応じなければ、米軍撤退も辞さないというトランプ氏の発言が喝采を受けてきたのは事実だ。
「(米軍駐留経費の負担を日本が増やさなければ在日米軍を撤退させるかとの問いに)喜んではいないが、答えはイエスだ」
トランプ氏のこれらの発言は、日本などの各国からより多くの駐留経費(いわゆる思いやり予算)を取りつけるために言っているだけで、本気で米軍の撤退を考えているわけではない、あるいは大統領になれば、もっと現実的な対応を取るようになるとの楽観論もあるが、在日米軍を取り巻く環境に不透明感が高まっていることは否めない。
そうしたなかで、沖縄ではトランプ氏当選に対する、戸惑いとも期待感ともつかぬ微妙な空気が漂っている。