「日米地位協定の抜本的な見直し、海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理・縮小、新辺野古基地建設阻止に取り組んでいく不退転の決意をここに表明します」
本土よりひと足先に真夏の日ざしが照りつけた6月19日の沖縄県那覇市。市内の奥武山公園で開かれた、米軍属による暴行殺人事件に抗議する県民大会で挨拶に立った翁長雄志知事はこう述べてみせた。日傘やタオルで暑さをしのぎながら、知事の発言に耳を傾ける多くの聴衆を前に、知事の高揚感はひとしおだっただろう。最後は、「ワッターウチナーンチュヌ クワウマガ マムティイチャビラ(私たち沖縄の人たちの子や孫を守っていきましょう)」と沖縄の言葉で怒鳴るような大きな声をあげて締めくくってみせた。県民の怒りを自ら示してみせたということなのであろう。
海兵隊の撤退まで言及
翁長知事はもともと革新の政治家ではない。むしろ、かつては自民党沖縄県連の幹事長をつとめ、保守出身をもって自ら任じ、「日米安保条約の大切さをよく理解している」と公言してきた人物だ。その翁長知事がついにここまで踏み込んだかと思わざるを得ない。日米地位協定の見直しや普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対はこれまでにも翁長氏が再三にわたって主張してきたことと同じだ。注目すべきは、「海兵隊の撤退」に言及したことだ。海兵隊は、軍人の数にして在沖米軍全体の57%を占め、基地面積で73%になる中核的存在。その撤退を求めるということの意味が持つ重さを翁長知事は十分に理解しているのだろうか。
沖縄本島中部のうるま市でウォーキング中の20歳の女性が32歳の米軍属の男に暴行され殺害された上に、北部の恩納村の雑木林に遺棄された、痛ましい事件を受け、沖縄では反基地感情がこれまでになく高まっている。沖縄県内の県議会や市町村議会では日米地位協定の改定や基地の整理・縮小を求める決議が相次ぎ、6月3日付『琉球新報』は、沖縄からの全基地撤去を求める県民が42.9%に上ったとする世論調査の結果を掲載した。反基地の動きは辺野古移設に反対してきたレベルから県内にある基地全ての撤去を求めるまでになっており、もはやこれまでとはフェイズが違う。